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ヴァイオリン・ソナタ ト長調 作品134

現在私が所有している録音の一覧です。ステレオまたはディジタルのスタジオ録音のCDをデフォルトとして表記し、それ以外の物については“備考”欄に記します。独奏者の名前をクリックすると、その録音についてのコメントを見ることができます。なお、印による評価は演奏と録音の両方を考慮しており、5点満点です。また、ディスク番号をクリックするとジャケット画像が別ウィンドウに表示されます。

ヴァイオリンピアノ録音年レーベル番号備考評価
AMBARTSUMIAN, LevonSHELUDYAKOV, Anatoly2003PhoenixPHCD 155
BERGQVIST, ChristianPÖNTINEN, Roland1987BISBIS-CD-364
BERMAN, PavelEPPERSON, Anne1991Koch3-7116-2 H1
BEZVERKHNY, MikhailSERGEYENYA, Timur2003Northern FlowersNF/PMA 9921/9922
BLACHER, KoljaNEMTSOV, Jascha2006HänsslerCD 93.190
BOROK, EmanuelYAMPOLSKY, Tatiana1981Sine Qua NonSA 2045LP
BRUSSILOVSKY, AlexandreGODART, Pascal1997Suoni e ColoriSC 53008
DOGADIN, SergeiTOKAREV, Nikolai2016Naxos8.573753
DUBINSKY, RostislavEDLINA, Luba1983ChandosCHAN8343
ESCHKENAZY, VeskoANGELOV, Ludmil2001Gega NewGD 269
FAUST, IsabelleMELNIKOV, Alexander2011harmonia mundiHMC 902104
FEDOTOV, MaximPETROVA, Galina2004Naxos8.557722
GHIDONI, PaoloGIAVAZZI, Stefano2000Bottega DiscanticaDISCANTICA 73
GLUZMAN, VadimYOFFE, Angela2005BISBIS-CD-1592
GRUBERT, IlyaTROPP, Vladimir2000Channel ClassicsCCS 16398
HOPE, DanielMULLIGAN, Simon1999NimbusNI 5631
HURNÍK, JiríKLEPÁC, Jaromír1989Panton81 1013-2
INGOLFSSON, JudithSTOUPEL, Vladimir2011audite92.576
JOSEFOWICZ, LeilaNOVACEK, John2006Warner2564 62997-2
KAGAN, OlegLEONSKAYA, Elizaveta1976Melodiya33 C 10-06875-76LP
KAGAN, OlegRICHTER, Sviatoslav1985MKMK 418014Live
KAGAN, OlegRICHTER, Sviatoslav1985YedangYCC-0106Live(17 May)
KAGAN, OlegRICHTER, Sviatoslav1988Live ClassicsLCL 183Live(13 May)
KALINOVSKY, GrigoryGONCHAROVA, Tatiana2002CentaurCRC 2636
KEULEN, Isabelle vanBRAUTIGAM, Ronald1992Fidelio9203Brilliant-7535, Brilliant-8128
KHOLODENKO, AntonMILSTEIN, Sergueï1993REM311210
KOGAN, PavelGINZBURG, Elizaveta1979MelodiyaC10-12267-8LP
KREMER, GidonGAVRILOV, Andrei1977VictorVICC-2080
LAREDO, JaimeKALICHSTEIN, Joseph1995-6ArabesqueZ6698
LUBOTSKY, MarkEDLINA, Ljuba1981Philips6514 102LP
MAESTRI, GiginoLEONARDI, Leonardo1989ASdiscAS 5007
MIDORIAydin, Özgür2012OnyxONYX 4084
MINEV, PavelMALKUS, Alexander2007Moscow ConservatorySMC CD 0201
MINTZ, SchlomoPOSTNIKOVA, Viktoria1991Erato2292-45804-2
MORAVEC, AntonínVONDROVIC, Otakar1976Supraphon1 11 2148 GLP
MORDKOVITCH, LydiaBENSON, Clifford1990ChandosCHAN 8988
MOURJA, GrafSCHOONDERWOERD, Arthur2003AlphaALPHA 055
OISTRAKH, DavidSHOSTAKOVICH, Dmitry1968RevelationRV70008Melodiya-MEL CD 10 02555
OISTRAKH, DavidRICHTER, Sviatoslav1969VictorVICC-2014Live(3 May), Le Chant du Monde LDC 278 1018/19, Melodiya-CM 02355-6(LP), Melodiya-M10-42045-46(LP)
PARKHOMENKO, OlgaDERENOVSKAYA, Natalya1980MelodiyaC10-17721-2LP
PIETSCH, FranziskaDE SOLAUN, Josu2018audite97.759
PRISHEPENKO, NataliaUGORSKAJA, Dina2016C'Avi-music8553425
RISSIN, JosefRISSIN-MORENOVA, Olga1988sound star-tonSST 30211
ROZHDESTVENSKY, SashaMENUHIN, Jeremy2015FHRFHR37
STOYANOV DUO (Robert Stoyanov (Vn), Artur Stoyanov (Pf))1983OrionORS 82441LP
SUSHANSKAYA, RimmaVIGNOLES, Roger1988MastersMCD 58
TALICH, JanKASMAN, Yakov2005CalliopeCAL 9355
TRETYAKOV, VictorEROKHIN, Mikhail1970Brilliant93005Live(9 Mar.)
DUO TSCHOPPBOVINO (Mirjam Tschopp (Vn), Riccardo Bovino (Pf))2015GenuinGEN 16428
ZHISLIN, GrigoriBAUER, Frieda1984MelodiyaC10 21151 009LP
【弦楽合奏&打楽器用編曲(Michail Zinman and Andrei Pushkarev編)】
ヴァイオリン指揮者オーケストラ録音年レーベル番号備考評価
KREMER, GidonKremerata Baltica2005DG477 6196

L. Ambartsumian, A. Sheludyakov
第1楽章: 10'24"
第2楽章: 6'19"
第3楽章: 13'25" 
ごく平凡な内容。特に、ピアノの表現意欲の希薄さが気になる。ヴァイオリンの方は、左手の技術についての不満は特にない。楽器の質の問題なのかもしれないが、低音の力強さはあるものの全体に肌理の粗い音色で、特に高音の艶に不足するのは残念。
C. Bergqvist, R. Pöntinen
第1楽章: 11'42"
第2楽章: 7'03"
第3楽章: 14'54" 
非常に端正な演奏で、冷静かつ淡々と音を積み重ねていくような演奏振りが特徴的。澄みきった音色に独特の美しさがあるものの、作品に内包される熱い情感が全く切り捨てられているところに、筆者は違和感をおぼえる。
P. Berman, A. Epperson
第1楽章: 12'20"
第2楽章: 6'39"
第3楽章: 14'39" 
技術的にはごく整然とした演奏。構成や内容の把握は今一つで、全体に漫然とした印象を受ける。楽譜を見ながら聴けば響きの確認くらいはできるだろうが、いきなりこの演奏を聴いても曲を理解することは難しいに違いない。
M. Bezverkhny, T. Sergeyenya
第1楽章: 11'23"
第2楽章: 6'27"
第3楽章: 16'24" 
残念ながら演奏の水準が低い。弱音に傾倒した表現そのものに問題はないのだが、技術的に心許ない上に、肝心のヴァイオリンの音色がその表現に耐えられ得るものではない。下手なクレーメルといった感じ。また、テンポが遅過ぎで、思わせぶりなだけの平面的な音楽に終始している。
K. Blacher, J. Nemtsov
第1楽章: 10'20"
第2楽章: 6'37"
第3楽章: 13'24" 
実に立派な演奏。個人的には、より透徹した響きの方が好みだが、このどこか温もりを感じさせる響きも悪くない。磨きぬかれた技術も素晴らしい。
E. Borok, T. Yampolsky
第1楽章: 9'53"
第2楽章: 6'27"
第3楽章: 15'50" 
堅実な技巧と真摯な音楽性に好感の持てる佳演。聴き手を圧倒するような力や派手さには欠けるものの、作品が本来持つ味わいが素直に表出されている。
A. Brussilovsky, P. Godart
第1楽章: 10'58"
第2楽章: 6'54"
第3楽章: 13'38" 
衒いのないオーソドックスな演奏。やや深刻ぶって構えている部分もあるが、基本的に無理なく作品の魅力を引き出しているところに好感が持てる。
S. Dogadin, N. Tokarev
第1楽章: 12'38"
第2楽章: 7'42"
第3楽章: 18'16" 
かなり遅めのテンポでじっくりと丁寧に音を紡いでいくような演奏。仄かに色気すら漂う叙情は悪くないものの、鬼気迫る鋭さは損なわれているため、満足感はあまりない。
R. Dubinsky, L. Edlina
第1楽章: 11'19"
第2楽章: 6'44"
第3楽章: 16'15" 
何とも熱い、人間的な情感に満ちた秀演。技術的には必ずしも完璧な出来とは言い難いものの、曲の隅々にまで感情を込めきった演奏には感動せずにはいられない。ベテランの室内楽奏者らしく、ヴァイオリンとピアノとのバランスも素晴らしい。近寄り難い雰囲気をもった作品だが、ドゥビーンスキイの演奏にはそうした難解さはほとんど感じられない。大変魅力的な演奏である。
V. Eschkenazy, L. Angelov
第1楽章: 10'56"
第2楽章: 6'59"
第3楽章: 14'11" 
木の香りがする骨太の音色が美しい。切れ味の良い技術も安定していて水準が高い。落ち着いた音楽の運びが、作品の美しさを丹念に描き出している。第2楽章はもう少し狂気を感じさせて欲しいところだが、両端楽章は実に見事。
I. Faust, A. Melnikov
第1楽章: 10'32"
第2楽章: 6'43"
第3楽章: 13'55" 
アーティキュレイションや音の処理においても明晰さが際立ち、いわば離散的に音を積み上げることでショスタコーヴィチ作品の持つ連続的なドラマトゥルギーを見事に構成している。ファウストの冷ややかな透明感といくぶん陽性なメルニコフの響きとの相性も抜群で、理知的でありながらも内面的な燃焼度の高さが印象的である。
M. Fedotov, G. Petrova
第1楽章: 10'28"
第2楽章: 6'56"
第3楽章: 15'08" 
妙にささくれだったヴァイオリンの音色が気になる。真摯な音楽作りには好感が持てるだけに、音色の好みで評価が分かれるように思う。
P. Ghidoni, S. Giavazzi
第1楽章: 9'26"
第2楽章: 6'53"
第3楽章: 13'38" 
底光りのする深い音色が魅力的である。男性的な力強さを感じさせるフレージングと渋い歌心に惹かれるが、意外にも第2楽章が腕力不足な感じで肩透かしを食らう。
V. Gluzman, A. Yoffe
第1楽章: 11'05"
第2楽章: 6'51"
第3楽章: 14'30" 
名演である。冒頭から、艶やかで深みのある、それでいて若々しさも感じさせるヴァイオリンの響きが実に素晴らしい。全体の構成に対するバランス感覚も秀逸で、表現の幅も非常に広い。ピアノとのアンサンブルも全く問題ない。この作品のファースト・チョイスとして薦めるに値する。
I. Grubert, V. Tropp
第1楽章: 11'05"
第2楽章: 7'33"
第3楽章: 15'06" 
堅実かつしっかりとした内容を持った佳演。技術面での不満はなく、解釈もまずは模範的なもの。全体に抒情性に重点をおいた演奏に仕上がっているが、第2楽章や第3楽章のいくつかの変奏では踏み込みの足りなさを感じさせる部分もある。作品の美しさは十分に味わえるものの、鬼気迫る作品の凄みを味わうには少々物足りない。
D. Hope, S. Mulligan
第1楽章: 10'53"
第2楽章: 6'22"
第3楽章: 14'10" 
端正な演奏。深さや凄みを感じさせるような演奏ではないが、曲の美しさを十分伝えている。どこかリラックスした雰囲気を持っているところも、逆にとっつきやすいと言えるかもしれない。
J. Hurník, J. Klepác
第1楽章: 11'15"
第2楽章: 6'05"
第3楽章: 13'31" 
落ち着いた地味な演奏だが、なかなかよく雰囲気を表出している。聴き手を圧倒するような力強さはないが、しっとりとした美しさと地に足のついた情熱がこの作品の魅力を改めて認識させてくれる。
J. Ingolfsson, V. Stoupel
第1楽章: 11'19"
第2楽章: 6'29"
第3楽章: 14'55" 
堅実な構成力で丁寧に仕上げられた、見通しの良い演奏なのだが、第2楽章や第3楽章のカデンツァなどで腕力不足の濁った響きが聴かれるのが惜しい。ピアノは地味ながらも安定したサポートで、ヴァイオリンの線の細さを巧く補っている。
L. Josefowicz, J. Novacek
第1楽章: 10'40"
第2楽章: 6'24"
第3楽章: 13'55" 
線の細さゆえに表現が単調なものに終始している感が否めない。第2楽章は、気持ちは分かるが、彼女の演奏スタイルで選択する解釈ではないだろう。ピアノは腕力に任せた演奏で、これもまた単調。
O. Kagan, E. Leonskaya
時間不詳 
確かな技術とスマートな音楽の運びが光る好演。過度の思い入れを排しながらも、作品の持つ多様な響きを十分に引き出している。もっとも、後年の録音に比べると、踏み込みの浅さが気にならなくもないが。
O. Kagan, S. Richter
第1楽章: 10'49"
第2楽章: 7'00"
第3楽章: 14'27" 
カガンの神経質な音色とヴィブラートに好みは分かれるかもしれないが、初演者リヒテルの名サポートと相まって、曲の本質をしっかりと掴んだ秀演に仕上がっている。ライヴ故か第2楽章など、わずかながら危なっかしい瞬間もあるが、緊張感と瞑想性とのバランスがとれた立派な演奏。技術的にも不満はない。
O. Kagan, S. Richter
第1楽章: 11'27"
第2楽章: 6'58"
第3楽章: 14'57" 
同時期の録音と印象は変わらない。こちらの方がより熱気に満ちているように聴こえるが、もしかしたら、同一の録音かもしれない。
O. Kagan, S. Richter
第1楽章: 11'21"
第2楽章: 6'51"
第3楽章: 14'19" 
同じ顔合わせによる3年前の旧盤と比較すると、線の細さが払拭され、透徹したカガンの音色と深遠なリヒテルの音楽とが見事に調和した、スケールの大きい立派な演奏に仕上がっている。最初はどこか落ち着かない客席が、曲が進むにつれて静かに緊張感を漲らせていく様も、わずかながらCDから聴いてとることもできる。間然とするところのない、完成度の高い秀演。
G. Kalinovsky, T. Goncharova
第1楽章: 12'13"
第2楽章: 5'56"
第3楽章: 14'59" 
いかにも無難な仕上がり。ヴァイオリンの音色は美しいし、やや控えめではあるものもピアノもそつなく寄り添っている。感覚的な美感に耽溺しているようにも聴こえ、残念ながら退屈な部分が少なくない。
I. v. Keulen, R. Brautigam
第1楽章: 9'24"
第2楽章: 6'10"
第3楽章: 12'34" 
奏法の故か、何とも軽くお気楽な演奏。技術的な破綻はないのだが、全く音楽が心に迫ってこない。僕の耳には、ただ単に弾き飛ばしているようにしか聴こえない。もっとも、技量不足の弾き手による演奏に比べればはるかにマシではある。
A. Kholodenko, S. Milstein
第1楽章: 10'24"
第2楽章: 6'27"
第3楽章: 14'59" 
丁寧で好感の持てる演奏。堅実な技巧とツボを押えた楽譜の読みが立派。スケールはそれほど大きくないが、無理をしていないのが逆に良い。録音が優れないのが残念。
P. Kogan, E. Ginzburg
第1楽章: 10'55"
第2楽章: 6'22"
第3楽章: 13'27" 
細部に少々粗さも感じられるものの、大きな音楽の流れとふさわしい音色が魅力的な秀演。際立った個性を感じさせるわけではないが、よく練り込まれた音楽の作りがこの作品のあるべき姿を真正に描き出している。
G. Kremer, A. Gavrilov
第1楽章: 11'19"
第2楽章: 5'56"
第3楽章: 15'55" 
若きクレーメルの鬼才ぶりが存分に発揮された名演。特に繊細で緊張感に満ちた弱音の美しさは特筆すべきもの。ガヴリーロフはやや大人しいが、スケール大きな風格ある伴奏でクレーメルの神経質な美しさを引き立てている。同じ顔触れによるライヴの熱狂とは対極にある演奏だが、この作品に対する本質的な姿勢は当然ながら同じ。どちらを取るかは聴き手の趣味の問題だろう。
J. Laredo, J. Kalichstein
第1楽章: 11'01"
第2楽章: 6'50"
第3楽章: 14'55"  
曲の捉え方は概ね的確なもの。雰囲気もよく出ている。しかしながら、発音の軽い奏法に不満を感じる。流儀の違いであって技術の優劣とは関係ないのだが…。
M. Lubotsky, L. Edlina
第1楽章: 11'10"
第2楽章: 6'44"
第3楽章: 16'15"  
実に優れた演奏。現代作品を得意とするルボツキイらしく、丁寧に積み上げられた響きの明晰さが印象的である。エドリーナの抒情的なピアノが音楽に温もりを与えていることで、現代曲風の冷たさに陥らずに済んでいることも好ましい。
G. Maestri, L. Leonardi
第1楽章: 10'16"
第2楽章: 6'42"
第3楽章: 13'55" 
弾けていないというわけではないのだが、明らかに技量不足。ただ音符をなぞるだけで精一杯といった感じ。ピアノも曲を理解して弾いているとは思えない。録音もぼやけており、全くセールスポイントのない演奏。
五嶋みどり, Ö. Aydin
第1楽章: 10'00"
第2楽章: 6'48"
第3楽章: 14'08" 
重厚な手応えのある立派な内容。確かな技巧の冴えはもちろんのこと、楽曲の諸相に応じて適宜適切な音色を駆使しつつ、虚仮威しのような見得は切っていないにも関わらず振幅の大きな表現力が見事。底光りのするような音の美しさが、渋いプログラムを一層魅力的なものにしている。第3楽章冒頭の和音の弾き方は、いかにも往年のジュリアード流で全く好みではないのだが、全体としては秀演と言ってよい。
P. Minev, A. Malkus
第1楽章: 11'41"
第2楽章: 6'31"
第3楽章: 14'24" 
第2楽章で顕著だが、強奏部でのヴァイオリンの余裕のない痩せた響きが表現の振幅を狭め、それをサポートするピアノも微温的で中庸な表現に終始する。
S. Mintz, V. Postnikova
第1楽章: 10'55"
第2楽章: 6'57"
第3楽章: 16'30" 
典型的なジュリアード流儀の奏法。加えてねっとりと音を潰し気味にしたミンツ独特の弾き方には好き嫌いが大きく分かれるだろう。とはいえ、技術的な水準は極めて高く、不思議と体温を感じさせない冷ややかで軽くただような演奏は、この作品の持つ美しさを浮かび上がらせているともいえる。ポーストニコヴァの重いピアノも立派。これがこの作品の真正な姿とは思えないが、聴き手の耳を惹きつける力は十分に持っている。
A. Moravec, O. Vondrovic
時間不詳 
全体に垢抜けない。真摯な音楽作りには好感が持てるが、切れ味や凄みといった印象はなく、鈍重さは否めない。
L. Mordkovitch, C. Benson
第1楽章: 9'24"
第2楽章: 6'18"
第3楽章: 13'45" 
何のコクもなく、ただ音楽が流れていくのが物足りない。音も結構雑で、ただ音響として聴くのにも若干不満が残る。ピアニストも下手ではないが、この作品が持つ世界を理解しているとはいえない。
G. Mourja, A. Schoonderwoerd
第1楽章: 10'12"
第2楽章: 7'03"
第3楽章: 13'25" 
1920年製のベヒシュタインをはじめとする“ピリオド楽器”の使用が、本盤の特徴である。確かに、ショスタコーヴィチが生きた当時の銘器(弦楽器を含む)に違いはなく、この謳い文句に嘘はない。ただ、奏法においては当時と現代との間にそう大きな違いはないので、ごく普通の現代的で知性的な演奏であるように聴こえる。響きの繊細さと端正なアンサンブルに聴くべきところは多いが、楽曲が内包する生々しい迫力には欠ける。「ピリオド」を謳いながら、初演当時の演奏様式を好む向きには物足りなさを感じさせるのは、どこか皮肉にも感じられる。
D. Oistrakh, D. Shostakovich
第1楽章: 9'19"
第2楽章: 6'04"
第3楽章: 11'45" 
初演の前に、モスクワの作曲家の家でオーイストラフと作曲者自身によって行なわれたプライヴェート録音。録音状態も悪く回転数のせいかピッチが高めなのと、当時すでに右手の調子が優れなかったショスタコーヴィチのピアノが第2楽章や第3楽章のカデンツァで壊滅状態であるために、一般的な鑑賞には全く薦められない。ただ数多くのアラを我慢して耳を澄ませると、特に瞑想的な部分の美しさに心惹かれるものがある。また、全編に異様な緊張感が漂っているのも特徴的である。60歳を過ぎた巨匠二人が、個室にこもってこのような演奏をしていた様子を思い浮かべるのは背筋が凍る思いだが、それもまた一興か。第1楽章の途中で柱時計(?)の鐘の音が聴こえるのは、臨場感があって楽しいかも。
D. Oistrakh, S. Richter
第1楽章: 10'15"
第2楽章: 6'35"
第3楽章: 14'17" 
初演のライヴ録音。歴史的価値だけではなく、演奏自体も不滅の価値を持っている。理想的なイントネーション、揺るぎないリズム、鬼気迫る緊張感。いずれをとってもこれ以上の演奏は考えられない。オーイストラフもリヒテルも、持てる力を全て発揮している。こんな巨人達の名演で作品を初演してもらうことのできたショスタコーヴィチは、ひょっとすると音楽史上最高の幸福者だったのかもしれない。
O. Parkhomenko, N. Derenovskaya
第1楽章: 10'20" 第2&3楽章: 19'08" 
真摯な演奏態度には好感が持てるが、技術の不足と、趣味の良くない作為的な表情(技術の不足に起因している部分も少なくない)とが感興をそいでしまうのが惜しい。ピアノも第3楽章のカデンツァで露呈するように、技術的に危なっかしく、弾き切るだけで精一杯で伴奏の域を出ていない。全体的な雰囲気は決して悪くないだけに、もったいない。
F. Pietsch, J. De Solaun
第1楽章: 11'51"
第2楽章: 6'41"
第3楽章: 15'22" 
かなりテンションの高い激しく鋭い演奏である。技術的には立派な出来なのだが、表現があまりに一辺倒なので聴き疲れしてしまう。第1楽章だけは弱音主体の作りなのだが、肝心の弱音にも魅力がない。
N. Prishepenko, D. Ugorskaja
第1楽章: 10'44"
第2楽章: 6'56"
第3楽章: 14'00" 
J. Rissin, O. Rissin-Morenova
第1楽章: 10'46"
第2楽章: 6'31"
第3楽章: 15'50" 
作品を完全に勘違いして捉えているような、濃厚な弾きっぷりに閉口する。だらしのないヴィブラート、余計な表情をつけた節回し。しかも、音も汚い。少なくとも僕にとっては、聴くべきところのない演奏。
S. Rozhdestvensky, J. Menuhin
第1楽章: 10'48"
第2楽章: 6'36"
第3楽章: 15'12" 
よく歌うサーシャのヴァイオリンに好き嫌いはあるにせよ、これほど歌謡性に富んだこの作品の演奏は珍しく、曲の新たな魅力を感じさせるに足る優れた演奏である。
Stoyanov Duo
第1楽章: 10'58"
第2楽章: 6'51"
第3楽章: 14'09" 
前半の2つの楽章は、少々野暮ったいものの無難な仕上がり。ただ、第3楽章では技量不足が露呈してしまう。ヴァイオリンの音程も怪しいが、ピアノのカデンツァも心許ない。全編を貫く真摯な姿勢には好感が持てるだけに惜しい。
R. Sushanskaya, R. Vignoles
第1楽章: 10'37"
第2楽章: 6'41"
第3楽章: 16'07" 
粘着質な歌い方は好みではないが、全体的にはそれほど悪くはない。しかしながら、第1楽章などあまりに流しすぎているような感じ。フレーズの何の意味も感じられないのが物足りない。
J. Talich, Y. Kasman
第1楽章: 9'46"
第2楽章: 6'32"
第3楽章: 13'39" 
淡々とした、それでいて温かみのある個性的な演奏である。物々しい思い入れは感じられず、第2楽章や第3楽章のカデンツァなどでも徒に興奮することはなく、終始節度が保たれている。聴きやすい演奏と言うこともできるが、全体に中途半端で物足りない印象は否めない。
V. Tretyakov, M. Erokhin
第1楽章: 10'56"
第2楽章: 7'20"
第3楽章: 15'03" 
収録されているピッチが完全に半音低い。聴いている内に慣れるようなものではなく、調性が狂って聴こえるので不快極まりない。演奏そのものは、真正面から作品と格闘しているかのような誠実なもの。技術的な精度も高く、時々一本調子になってしまうことを除けば模範的な演奏といえるだろう。エローヒンのピアノも立派な存在感を持っている。それだけに、録音の不備が残念でならない。
Duo TschoppBovino
第1楽章: 11'15"
第2楽章: 6'50"
第3楽章: 13'29" 
こういう歌謡性を感じさせる穏やかで柔らかな音楽作りは他にあまり聴かれないアプローチなので、作品の隠れた一面を明らかにした演奏と言うことができるかもしれない。
G. Zhislin, F. Bauer
第1楽章: 11'08"
第2楽章: 6'25"
第3楽章: 14'43" 
やや野暮ったいが、それがまたなかなかいい雰囲気を出している秀演。音楽的にはピアノの力が大きいような気もするが、屈託なく伸びやかに歌うヴァイオリンもそれなりに魅力的。作品に正面から取り組んだ覇気のある若々しい演奏と言えるだろう。
G. Kremer/Kremerata Baltica
第1楽章: 11'41"
第2楽章: 7'05"
第3楽章: 17'00" 
ピアノ・パートを小規模の管弦楽に編曲したものだが、ピアノという単一の楽器が醸し出す多彩な響きを多彩な楽器に置き換えたことで、音楽の凝縮力が損なわれてしまった感が否めない。特に、作品の持つ内的な高揚感や強靭な精神を即物的に大編成の壮麗な響きで表現しているところが納得できない。オーケストラが様々な奏法で多様な音色を出しているのも、クレーメル個人がするのとは異なり、妙にあざとい印象しか残らない。クレーメルは相変わらず達者な技術を駆使して旺盛な表現意欲を聴かせるし、クレメラータ・バルティカも健闘しているが、個人的には積極的に評価する気にはならない。

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