ENGLISH


交響曲第7番 ハ長調 作品60

現在私が所有している録音の一覧です。ステレオまたはディジタルのスタジオ録音のCDをデフォルトとして表記し、それ以外の物については“備考”欄に記します。指揮者の名前をクリックすると、その録音についてのコメントを見ることができます。なお、印による評価は演奏と録音の両方を考慮しており、5点満点です。また、ディスク番号をクリックするとジャケット画像が別ウィンドウに表示されます。

指揮者オーケストラ録音年レーベル番号備考評価
AHRONOVICH, YuriRadio Sinfonieorchester Stuttgart des SWR1993ProfilPH07009Live(20-21 Apr.)
ANCERL, KarelCzech Philharmonic Orchestra1957Supraphon11 1952-2
ANCERL, KarelCzech Philharmonic Orchestra1967PragaPR 254 002/03Live
ASHKENAZY, VladimirSt Petersburg Philharmonic Orchestra1995LondonPOCL-1751
BARSHAI, RudolfJunge Deutsche Philharmonie & Members of Moscow Philharmonic Orchestra1991BISBIS-CD-515Live(22 June)
BARSHAI, RudolfWDR Sinfonieorchester1992Brilliant6324Brilliant-8128
BERGLUND, PaavoBournemouth Symphony Orchestra1974EMITOCE-8910EMI-7243 5 73839 2 9
BERNSTEIN, LeonardNew York Philharmonic1962CBS/SONYCSCR 8174
BERNSTEIN, LeonardChicago Symphony Orchestra1988DG427 632-2Live(June)
BYCHKOV, SemyonWDR Sinfonieorchester Köln2003AvieAV 0020
CAETANI, OlegOrchestra Sinfonica di Milano Giuseppe Verdi2000Arts47667-2Live(Dec.)
CELIBIDACHE, SergiuBerlin Philharmonic Orchestra1946Fono Enterprise S.r.l.AB 78685Live(21 or 22 Dec.), Theorema-TH 121.122
DMITRIEV, AlexanderSt. Petersburg Academic Symphony Orchestra2003Water Lily AcousticsWLA-WS-77-CDLive(Sept.)
ELIASBERG, CarlLeningrad Philharmonic Orchestra1964Great Musicians of Palmira Du Nord2003-003Live(27 Jan.), Melodiya-M10 45011 003(LP)
FEDOSEEV, VladimirMoscow Radio Symphony Orchestra1996EXTONOVCL-00169
FEDOSEEV, VladimirTchaikovsky Symphony Orchestra of Moscow Radio2004ReliefCR991079Live(6 Dec.)
GERGIEV, ValeryKirov Orchestra & Rotterdam Philharmonic Orchestra2001Philips470 845-2Live(19-21 Sept.), Philips-470 841-2
GERGIEV, ValeryMariinsky Orchestra2012MariinskyMAR0533SACD
HAITINK, BernardLondon Philharmonic Orchestra1980LondonPOCL-9255/66Decca-UCCD-3597(1st mov.(excerpt) only.)
HERBIG, GüntherRundfunk-Sinfonieorchester Saarbrücken2000Berlin Classics0017972BC
INBAL, EliahuWiener Symphoniker1991DenonCOCO-9942
INOUE, MichiyoshiSt. Petersburg Symphony Orchestra2007Octavia RecordsOVCL00777Live(10 Nov.)
JANSONS, MarissLeningrad Philharmonic Orchestra1988EMICDC 7 49494 2
JANSONS, MarissRoyal Concertgebouw Orchestra2006RCO LiveRCO 06002SACD, Live(19 & 22 Jan.)
JANSONS, MarissSymphonieorchester des Bayerischen Rundfunks2016BR Klassik900184Live(9-12 Feb.)
JÄRVI, NeemeScottish National Orchestra1988ChandosCHAN 8623
JÄRVI, PaavoRussian National Orchestra2014PentaTonePTC 5186 511
KEGEL, HerbertRundfunk-Sinfonieorchester Leipzig1972WeitblickSSS0028-2Live(16 May)
KIM, Ho-YunState Symphony Orchestra of DPRK
Kwangmyong Music CompanySSO-C-115
KITAENKO, DmitriGürzenich-Orchester Köln2002Capriccio71 029SACD, Live(15-18 Sept.)
KOFMAN, RomanBeethoven Orchestra Bonn2004MDG937 1203-6SACD
KONDRASHIN, KirilMoscow Philharmonic Symphony Orchestra1975VictorVICC-40094/103Melodiya-MEL CD 10 01065, alto-ALC 1241(Konstantin Ivanov)
KUBELIK, RafaelConcertgebouw Orchestra, Amsterdam1950AudiophileAPL 101.557Live(9 Feb.)
MASUR, KurtNew York Philharmonic1998Teldec3984-21467-2Live(May)
MASUR, KurtLondon Philharmonic Orchestra2003London Philharmonic OrchestraLPO-0103Live(13 Dec.)
MASUR, KurtOrchestre National de France2006NaïveV 5071Live(18 May)
MATA, EduardoDallas Symphony Orchestra1991DorianDOR-90161
MRAVINSKY, EvgenyLeningrad Philharmonic Orchestra1953VictorVICC-40118/23
NANUT, AntonLjubljana Symphony Orchestra
VOXACD 8197
NELSONS, AndrisCity of Birmingham Symphony Orchestra2011OrfeoC 852 121 ALive(10 & 12 Nov.)
NELSONS, AndrisBoston Symphony Orchestra2017DG483 6728Live(Feb.).
NEUMANN, VáclavCzech Philharmonic Orchestra1974SupraphonCOCO-9076
NOSEDA, GianandreaLondon Symphony Orchestra2019LSOLSO0859Live(5 Dec.), SACD
OUE, EijiOsaka Philharmonic Orchestra2004fontecFOCD9255Live(12 & 13 Feb.)
PEHLIVANIAN, GeorgeJoven Orquesta Nacional de España2016Ibs ClassicalIBS-132017
PETRENKO, VasilyRoyal Liverpool Philharmonic Orchestra2012Naxos8.573057
POLYANSKY, ValéryRussian State Symphony Orchestra1996ChandosCHAN9621
ROSTROPOVICH, MstislavNational Symphony Orchestra1989EratoWPCC-3252
ROZHDESTVENSKY, GennadyMoscow Radio Symphony Orchestra1968RevelationRV 10059Live(8 Jan.), Brilliant-9019
ROZHDESTVENSKY, GennadyUSSR Ministry of Culture State Symphony Orchestra1984VictorVICC-40001/11
SHOSTAKOVICH, MaximLondon Symphony Orchestra1990Collins70292
SHOSTAKOVICH, MaximPrague Symphony Orchestra2002SupraphonSU 3890-2Live(27 Feb.)
SLOVÁK, LadislavCzech-Slovak Radio Symphony Orchestra1989Naxos8.550627
STEINBERG, WilliamBuffalo Philharmonic Orchestra1946DanteLYS186
STOKOWSKI, LeopoldNBC Symphony Orchestra1942PearlGEMM CDS 9044Live(13 Dec.), Memories-MR2541/2544
SVETLANOV, EvgeniUSSR State Symphony Orchestra1968VictorSH-7712/3LP, Victor-VIC-5002/3(LP), ZYX-CLA 10011-2, Scribendum-SC 025
SVETLANOV, EvgeniUSSR State Symphony Orchestra1978ScribendumSC 027Live(28 Feb.)
SVETLANOV, EvgeniSwedish Radio Symphony Orchestra1993Vanguard99043Live(10 and 11 Sept.)
SVETLANOV, EvgeniResidentie Orkest the Hague1995CanyonPCCL-00380Live(19 and 20 Jan.)
TABAKOV, EmilBulgarian National Radio Symphony Orchestra2011Gega NewGD 382
TEMIRKANOV, YuriSt. Petersburg Philharmonic Orchestra1995RCA09026 62548 2
TEMIRKANOV, YuriSt. Petersburg Philharmonic Orchestra2008SignumSIGCD194Live(22 May)
TOSCANINI, ArturoNBC Symphony Orchestra1942MemoriesHR 4183Live(19 July)
WIGGLESWORTH, MarkBBC National Orchestra of Wales1996BISBIS-CD-873
WINKLER, JohannesFDJ-Sinfonieorchester der Hochschulen für Musik1980Eterna8 27 485-486LP, Live(25 May)
YABLONSKY, DmitryRussian Philharmonic Orchestra2003Naxos8.557256

Y. Ahronovich/Radio Sinfonieorchester Stuttgart des SWR
第1楽章: 24'29"
第2楽章: 11'58"
第3楽章: 18'40"
第4楽章: 15'59" 
両端楽章こそ大仰な感情表現が聴かれなくもないが、全体には端正な音楽作りを志向した、いかにもな“ソ連崩壊後”の純音楽的なショスタコーヴィチ解釈である。オーケストラの技術精度にさらなる緻密さがあれば、より現代的な演奏に仕上がったかもしれない。一方で、熱気に任せたような両端楽章に比べると、中間の2つの楽章の印象は薄く、録音がなされた1993年という時代には、まだショスタコーヴィチ解釈の方向性が定まりきっていなかったことが思い起こされる。
K. Ancerl/Czech Philharmonic Orchestra
第1楽章: 25'24"
第2楽章: 10'24"
第3楽章: 18'01"
第4楽章: 16'21" 
非常に純度の高い佳演。細部まで緻密に磨きあげながらも、自然な音楽の流れが犠牲になっていない。純音楽的なアプローチといえるが、それでいて曲に対する共感にも不足していないところに好感が持てる。録音は古いが、聴きづらくはない。この曲に抵抗のある人には、お薦めの演奏である。
K. Ancerl/Czech Philharmonic Orchestra
第1楽章: 25'32"
第2楽章: 10'33"
第3楽章: 18'06"
第4楽章: 16'35" 
きちんと確認したわけではないが、正規録音とほぼ同じような演奏。会場のノイズが聴こえるが、Praga盤ゆえに信用はできない。いわゆる純音楽的に磨きあげられた演奏で、この曲につきまといがちな嫌味は全くない。それでいて自然な高揚感を持っているところが、この演奏の傑出している点である。
V. Ashkenazy/St Petersburg Philharmonic Orchestra
第1楽章: 26'24"
第2楽章: 10'43"
第3楽章: 15'41"
第4楽章: 16'40" 
アシケナージはいつになく細部に拘った解釈を見せているが、それが音楽の流れを阻害する結果になっている。随所でフレーズがぎくしゃくするため、この曲が本来持っている高揚感が犠牲になってしまったのは残念。オーケストラの音色は文句なし。もっと素直に演奏してくれれば良いのに…。
R. Barshai/Junge Deutsche Philharmonie & Members of Moscow Philharmonic Orchestra
第1楽章: 25'53"
第2楽章: 10'25"
第3楽章: 17'33"
第4楽章: 16'40" 
自然な音楽の流れと、共感に満ちた興奮とがバランスよく盛り込まれた名演。ライヴならではの瑕もない訳ではないが、ほとんど気にならない。二つの団体の複合オーケストラであるにもかかわらず、アンサンブルのみならず音色までもが素晴らしく溶け合っている。曲のすみずみまで熱い情感が漲っているため、勢いで押すところから抒情的な部分に至るまで、一切弛緩することなく聴かせてしまう説得力がある。
R. Barshai/WDR Sinfonieorchester
第1楽章: 26'20"
第2楽章: 10'24"
第3楽章: 18'16"
第4楽章: 16'34" 
解釈の基本線はライヴ盤とそう大きく変らない。楽譜に忠実で真摯な演奏と言えるだろう。ただ、音楽の燃焼度が今一つなのと、オーケストラの技量にも若干不満が残る。立派な演奏だが、敢えてこの盤をとりたいと思わせるほどの魅力には欠けるのが惜しい。
P. Berglund/Bournemouth Symphony Orchestra
第1楽章: 26'50"
第2楽章: 10'40"
第3楽章: 19'48"
第4楽章: 16'02" 
いわゆる純音楽的な秀演。奇を衒うことなく、実に素直に音楽が流れていく。力づくの部分は皆無だが、共感に満ちた素朴な高揚感が素晴らしい。この曲が持つ押し付けがましい嫌味を感じさせずに、自然に引き込んでしまう魅力がある。オーケストラ、特に弦楽器に弱さが感じられるのが惜しいが、この曲に抵抗を持っている聴き手には強く薦めたい。
L. Bernstein/New York Philharmonic
第1楽章: 27'52"
第2楽章: 13'55"
第3楽章: 16'34"
第4楽章: 16'39" 
第1楽章展開部の第3変奏(練習番号25〜29)がカットされている。演奏自体は若々しい覇気に満ちていながらも、コクのある和声でじっくりと歌い込んだ情熱的な佳演。曲に対する素朴な共感を呼び起こすような演奏である。引き締まった低弦や金管の響きが格好良く、聴きやすいことはこの上ない。
L. Bernstein/Chicago Symphony Orchestra
第1楽章: 31'43"
第2楽章: 14'48"
第3楽章: 19'25"
第4楽章: 18'52" 
バーンスタイン晩年の芸風と曲とが抜群の相性を見せた、とてつもなく巨大な名演。時として自らの個性ばかりが前面に出てしまうことの多いバーンスタインだが、ここではそれが全て曲の本質と共鳴している。全ての音に熱い血が通い、どの一瞬も気を抜くことができない。かなり遅いテンポを取っているものの、飽きるということがない。シカゴ響の技術も抜群で、スコアに書かれていることが完璧に音になっている。
S. Bychkov/WDR Sinfonieorchester Köln
第1楽章: 27'13"
第2楽章: 10'38"
第3楽章: 18'04"
第4楽章: 16'31" 
整然とまとめられた丁寧な好演。単なる交通整理に徹したつまらない演奏とは一線を画し、譜面に盛り込まれた内容を丹念に描き出しているのが立派。勢いに任せなくても十分に聴き手に満足を与えることができるという、優れた見本。ただやはり個人的には、もっと咆哮して欲しいと思う部分もないわけではないが。
O. Caetani/Orchestra Sinfonica di Milano Giuseppe Verdi
第1楽章: 25'52"
第2楽章: 11'30"
第3楽章: 18'33"
第4楽章: 17'37" 
よく歌う、それでいて決して感情にのみ流されない節度を持った、しっかりとした内容のある佳演である。作品のメロディアスな側面が先に耳につくが、燃焼度の高い高揚にも不足しない。
S. Celibidache/Berlin Philharmonic Orchestra
第1楽章: 26'13"
第2楽章: 11'43"
第3楽章: 22'42"
第4楽章: 18'42" 
早い部分でのテンポが不安定で、曲の造形という面で不満が残る。過剰に興奮してしまうためか、アンサンブルが雑になるところも多い。ところどころ美しい部分もない訳ではないが、他と比べて際立っているといえるほどではない。録音状態もかなり悪く、チェリビダッケの熱烈なファンでもない限り、敢えてこの演奏を聴く価値はないだろう。
A. Dmitriev/St. Petersburg Academic Symphony Orchestra
第1楽章: 25'17"
第2楽章: 10'53"
第3楽章: 14'29"
第4楽章: 15'27" 
演奏そのものはロシア風でありながらも洗練された音楽で心地よいのだが、録音が奇妙なほどに遠く、音楽の細部が聴き取り辛い。それなりに熱気溢れる盛り上がりも窺えるのだが、扉の向こうで演奏が繰り広げられているような臨場感のなさには不満しか残らない。
C. Eliasberg/Leningrad Philharmonic Orchestra
第1楽章: 26'51"
第2楽章: 9'20"
第3楽章: 17'40"
第4楽章: 18'29" 
録音状態(というよりは、おそらく復刻状態)が非常に悪いのが残念。全曲を通して泥臭いロシアン・サウンドに満ちているのだが、それを堪能できるような音質ではない。ただし、演奏自体は立派な秀演。ライヴということもあって大変威勢の良い音楽に仕上がっているが、エリアスベルグの解釈は地に足のついた正統的なもの。見通しの良い構成感を持った音楽作りは、爆発的な熱気を放射する暴れ馬のようなオーケストラを見事にドライブしている。
V. Fedoseev/Moscow Radio Symphony Orchestra
第1楽章: 26'48"
第2楽章: 11'48"
第3楽章: 14'56"
第4楽章: 17'58" 
随所でテンポ設定に個性的な扱いが聴かれる。基本的にはフェドセーエフらしい颯爽とした音楽の作り。第2楽章の昼間部や第3楽章の第二主題などが好例。全体の響きは案外腰が軽くて意表を突かれるが、それは流れ重視の楽曲解釈も少なからず影響しているのかも。
V. Fedoseev/Tchaikovsky Symphony Orchestra of Moscow Radio
第1楽章: 27'14"
第2楽章: 11'29"
第3楽章: 18'15"
第4楽章: 15'14" 
旧盤と同様に、沸き立つような音楽の流れが前面に押し出された独特の解釈である。残念ながら、僕はこの解釈に共感することはできなかった。歴史的・政治的な背景を度外視した純音楽的な解釈と言えなくもないが、それにしても、行間に込められた情感が吹き飛んでしまっているのは問題。オーケストラが意外と冴えないことも影響しているのかもしれない。
V. Gergiev/Kirov Orchestra & Rotterdam Philharmonic Orchestra
第1楽章: 27'32"
第2楽章: 13'05"
第3楽章: 17'58"
第4楽章: 20'04" 
合同オーケストラによる演奏だが、どちらもゲールギエフの手兵だけに不統一な部分は感じられない。壮大な響きと流麗な音楽の流れでこの大曲を一気に聴かせる。だが、ただそれだけという印象。確かに巧い演奏だが、作品の内容を抉り出しているとは言い難い。
V. Gergiev/Mariinsky Orchestra
第1楽章: 28'45"
第2楽章: 15'30"
第3楽章: 19'03"
第4楽章: 19'03" 
いかにもゲールギエフが得意そうな作品だが、旧盤と同様に、流麗さばかりが重視されたような、全方位に物足りない出来である。『証言』以降、この交響曲の解釈には紆余曲折があったわけだが、ことさらに「裏の」悲劇性を描出しようとする演奏で成功した例はない。素直に、重厚壮大な響きと思い入れたっぷりな大音量でこれ見よがしに興奮・感動させてくれれば良いのに。
B. Haitink/London Philharmonic Orchestra
第1楽章: 28'59"
第2楽章: 11'35"
第3楽章: 20'23"
第4楽章: 18'30" 
丁寧にスコアが音化された演奏。“純音楽的”という形容詞が非常にしっくりとくる。力任せに絶叫したり、必要以上に深刻ぶったりすることがないので、極めて素直に音楽の響きと構成を楽しむことができるだろう。ただ、音楽に身を任せているうちに忘我の境地に達するような、居ても立ってもいられなくなるような高揚感とは無縁である。
G. Herbig/Rundfunk-Sinfonieorchester Saarbrücken
第1楽章: 25'18"
第2楽章: 10'55"
第3楽章: 16'35"
第4楽章: 16'09" 
地味ながらも手堅い演奏。第1楽章や第2楽章のクライマックスで打楽器に乱れがあるものの、ヘルビヒによる同レーベルのショスタコーヴィチ録音中、この曲だけが廃盤扱いになっている理由はよくわからない。ショスタコーヴィチの歪んだ響きよりも、素直な旋律美が前面に押し出されているので、極めて聴きやすく耳に優しい音楽となっている。
E. Inbal/Wiener Symphoniker
第1楽章: 28'38"
第2楽章: 11'46"
第3楽章: 19'07"
第4楽章: 16'37" 
丁寧な演奏だが、オーケストラの鳴りに不満が残る。よく言えば上品な歌い回しも、この作品に関しては物足りない。スコアを見ながら聴くとそれなりにはっとさせられる部分もないわけではないが、全体としてはあまり印象に残らない演奏。
井上道義/St. Petersburg Symphony Orchestra
第1楽章: 27'17"
第2楽章: 11'30"
第3楽章: 18'00"
第4楽章: 18'12" 
前半はどこか歯車の噛み合わない演奏だが、第3楽章以降は非の打ち所がない感動的な大熱演である。論理的なテンポ設定は、全曲を通じて極めて適切なもの。
M. Jansons/Leningrad Philharmonic Orchestra
第1楽章: 25'54"
第2楽章: 9'53"
第3楽章: 16'22"
第4楽章: 16'17" 
早目のテンポで颯爽と流れる佳演。レニングラード・フィルの音色と機能がヤーンソンスの解釈を助けている。過剰に興奮することも深刻ぶることもない中庸な音楽に仕上がっているが、気負いのない素直な音楽の流れが爽やかで聴きやすい。
M. Jansons/Royal Concertgebouw Orchestra
第1楽章: 27'22"
第2楽章: 11'20"
第3楽章: 18'39"
第4楽章: 17'16" 
極上のオーケストラを伸び伸びと歌わせる、ヤーンソンスの手腕が存分に発揮された佳演といえるだろう。解釈上の新機軸があったり、聴き手に新たな発見をさせるような音楽ではないが、作品に対する素直な取り組みに好感が持てる。オーケストラの幾分くすんだ響きのおかげで、どこか節度を持った上品さも感じられる。
M. Jansons/Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks
第1楽章: 27'03"
第2楽章: 11'22"
第3楽章: 17'45"
第4楽章: 17'01" 
M. ヤンソンスが奏でる響きは冒頭ですら無条件の明るさではなく、幾分の翳りを孕んだ落ち着いたものである。一方で、たとえば終楽章コーダを過度に陰鬱に脚色したりするようなこともなく、一貫して端正で純音楽的なドラマが淀みなく繰り広げられる。音楽作品としてのこの交響曲の真価が余すところなく発揮された名演である。
N. Järvi/Scottish National Orchestra
第1楽章: 25'30"
第2楽章: 11'03"
第3楽章: 17'03"
第4楽章: 15'18" 
このコンビによるショスタコーヴィチ演奏らしく、若々しい覇気に満ちた、引き締まった演奏が繰り広げられている。特に第1楽章展開部の推進力は特筆すべき出来。テンポの弛まない終楽章もなかなか素晴らしい。嫌味たっぷりなサウンドを、これほどまでに爽快に聴かせてしまう演奏は他にない。ただ、中間楽章があまりにそっけなく、心に響いてこないのが残念。
P. Järvi/Russian National Orchestra
第1楽章: 26'17"
第2楽章: 11'45"
第3楽章: 17'16"
第4楽章: 17'25" 
快速テンポによるスタイリッシュな演奏。第1楽章は、思い入れの類を廃して一気呵成に畳み掛けるような勢いが素晴らしいが、第2楽章以降はこの勢いが空回りしてしまい、空虚な音響の羅列に堕してしまったのが残念。中間楽章こそ阿鼻叫喚と紙一重の思い入れを求めたいだけに、第1楽章を聴きながら危惧していた通りなのだが、終楽章まで単に弾き飛ばした感じになってしまったのは意外だった。この交響曲のように標題的な内容を持つ楽曲には、最低限の垢が必要ということなのだろう。
H. Kegel/Rundfunk-Sinfonieorchester Leipzig
第1楽章: 25'08"
第2楽章: 10'09"
第3楽章: 18'19"
第4楽章: 16'33" 
この作品の持つ多層的な内容を全て表現し尽した名演。揺るぎのないテンポの中で、ありとあらゆる感情が複雑な表情を持って音楽に結晶化されている。この作品の割り切れなさと有無を言わせぬ高揚感とが、これほどまで見事に両立している演奏は皆無。特に第3楽章以降の深く説得力のある音楽は他の追随を許さない。オーケストラの音色はいかにもドイツ的で、特に金管楽器の硬質な響きは好みが分かれるだろうが、こうした解釈にはむしろふさわしい。クライマックスでの暴力的なまでの響きも感覚的な次元を超えた刺激に満ちている。オーケストラはあまり達者ではなく、精緻なアンサンブルを要求する向きには不満もあろうが、少なくとも筆者にとっては些事である。
H. Kim/State Symphony Orchestra of DPRK
第1楽章: 26'43"
第2楽章: 10'19"
第3&4楽章: 38'35" 
使用楽譜のせいなのか細かい音の違いがあったりするものの、テンポ設定や解釈自体はごく普通の演奏。問題は、全体の響きである。ゴリゴリとささくれ立って突き刺さるような弦楽器の音色はあまり良い楽器を使っていないのかもしれないが、それでいて音程やヴィヴラートが気持ち悪いほど揃い過ぎている。それが、異様に電子的なエコーをかけられて響いているので、どうにも違和感がある。管楽器も音をはずすようなことはないが、まるでシンセサイザーのような音色。しかも、音量的に盛り上がることがあっても、音楽そのものは徹底して冷ややかなまま。こんなアルバムに必要以上の手間をかけているとも思えないので、普通に何度かのテイクを編集しているだけなのだろうが、とても人間が演奏しているようには思えない。何とも奇妙な演奏。
D. Kitaenko/Gürzenich-Orchester Köln
第1楽章: 27'13"
第2楽章: 10'51"
第3楽章: 17'55"
第4楽章: 19'34" 
とても立派な演奏。いわゆる純音楽的な演奏で、個々の主題や動機を丁寧に性格付けしながら、かっちりとした構成感を持ってこの長大な交響曲をまとめあげている。威圧的な音は注意深く避けられ、それでいて重量感のある(ロシア風の強烈さはないものの)響きが達成されている。スヴェトラーノフやバーンスタインのような暑苦しさを求める向きには物足りなさもあるだろうが、これはこれで非常に優れた解釈・演奏ということができるだろう。
R. Kofman/Beethoven Orchestra Bonn
第1楽章: 26'58"
第2楽章: 10'38"
第3楽章: 18'51"
第4楽章: 17'29" 
解釈はビシュコフ盤に似た、標題性に惑わされることのない丁寧で堅実なもの。特に中間楽章が見事。オーケストラに力強さは感じられないが、無理をすることなく端正な音作りをしているところに好感が持てる。第3楽章の中間部が速すぎる演奏に良い演奏はない、というのが僕の持論だが、コフマンは適切なテンポを保ってコラールの切実な美しさを生かしている。ただ、両端楽章には物足りなさを感じるのも事実。
K. Kondrashin/Moscow Philharmonic Symphony Orchestra
第1楽章: 26'25"
第2楽章: 10'32"
第3楽章: 15'12"
第4楽章: 18'59" 
どちらかと言えばスマートな解釈だが、典型的なロシアン・サウンドが重厚な魅力を加えている。何より素直な共感が、聴き手の胸を熱くする。変ったことをすることなく、この作品の魅力を適正に伝えるという点では特に傑出した演奏。おおらかな歌心も素晴らしく、バランスのとれた名演。
R. Kubelik/Concertgebouw Orchestra, Amsterdam
Total Time: 73'22" 
熱い共感に満ちた、深い作品理解が光る大熱演。起伏に富んだ音楽の流れにクベリークの手腕が存分に発揮されている。ただ、オーケストラが技術的に少々キツい。録音状態も悪く、この演奏の真髄が十分に伝わるとは言い難いのが残念。
K. Masur/New York Philharmonic
第1楽章: 26'35"
第2楽章: 10'59"
第3楽章: 19'07"
第4楽章: 18'03" 
安定したアンサンブルは立派だが、何とも煮えきらない音楽。全体に流れ重視の抒情的な解釈だが、クライマックスでの高揚感が足りず、聴いていて欲求不満を感じる。曲の背後に秘められた悲劇性を描き出そうとする意図なのかもしれないが、説得力に欠ける。第1楽章の展開部は逆に妙に明るい雰囲気で、マズアの故国ドイツに対する屈折した感情が窺えるような気すらする。
K. Masur/London Philharmonic Orchestra
第1楽章: 24'40"
第2楽章: 10'19"
第3楽章: 17'33"
第4楽章: 17'58" 
愚直なまでにスコアをそのまま音にしていることで、表現そのものは直線的ではあるが、巨大でありながらも素朴な熱狂が聴き手を生々しく揺さぶる。第7番に関しては「証言」的な深読みは間違いだと考える私にとって、こういう「余計なことをしない」演奏は非常に好ましい。
K. Masur/Orchestre National de France
第1楽章: 27'07"
第2楽章: 10'28"
第3楽章: 18'17"
第4楽章: 18'43" 
ニューヨーク・フィル盤に感じた物足りなさや不満が全て解消されているばかりか、流麗でありながらも共感に満ちた高揚感が素晴らしく、ショスタコーヴィチの作品に対する受け止め方が同時代の音楽から古典へと変化しつつあった、時代の過渡期を象徴するような名演。オーケストラの熱気も凄まじい。
E. Mata/Dallas Symphony Orchestra
第1楽章: 28'47"
第2楽章: 10'59"
第3楽章: 18'58"
第4楽章: 18'27" 
これといった特徴のない演奏。オーソドックスな解釈ではあるが、音に力がなく、聴き手を引き込む力に欠ける。
E. Mravinsky/Leningrad Philharmonic Orchestra
第1楽章: 27'08"
第2楽章: 10'10"
第3楽章: 19'08"
第4楽章: 16'35" 
1楽章に全体にエコーがかかったような音質で聴きづらい部分があるが、当時のソ連の録音としては標準的。したがって、随所に表われる強奏部はことごとくマイクに入りきっていない。2楽章の57小節に全集版の楽譜と音が違っていたり(西側初演のトスカニーニも同じ音形。自筆譜を見る限り、全集版の誤植であろう。)、細かいアーティキュレーションが異なっていたりするのが目を引くが、版の問題なのか解釈の問題なのかはよく分からない。

非常に劇的なこの曲を、極めて冷静に指揮している様子が見て取れる。したがって曲の弱い部分も全て露呈されてしまう感もあるが、1楽章のボレロの部分で、練習番号45の転調前に戦慄を覚えさせる演奏はこれ以外にない。スコア自体は単純であるため、多くの指揮者がその劇的な効果に安易に身を委ねてしまうところだが、ムラヴィーンスキイは実に的確に曲のツボを心得ている。4楽章も、コーダだけ絶叫して盛り上げるスヴェトラーノフなどとは大違い。極めて緻密に計算されている。3楽章のコーダで最初の主題を弦楽器が演奏する部分の美しさは、このコンビだからこそなし得たものであろう。録音状態さえもう少し良好であれば、間違いなくトップクラスの演奏である。
A. Nanut/Ljubljana Symphony Orchestra
第1楽章: 26'32"
第2楽章: 10'33"
第3楽章: 16'57"
第4楽章: 17'40" 
細かいアンサンブルの乱れはあるものの、手堅くまとめられた佳演。少なくとも日本では全く無名のコンビだが、作品に対する素直な共感を前面に押し出した、それでいて力任せにならない立派な演奏である。安定した弦楽器を主体とした音作りは、この作品に付きまといがちな嫌味を払拭してくれる。地味ながらも一聴の価値はある。
A. Nelsons/City of Birmingham Symphony Orchestra
第1楽章: 26'07"
第2楽章: 11'00"
第3楽章: 19'36"
第4楽章: 16'58" 
オーケストラの機能はそれほど高くないのだが、隅々まで目配りの行き届いたアンサンブルと、スコアを逸脱することなく、それでいて情感と熱量が十分に込められた音楽は、流麗かつ端正でありながらもスケールの大きなもの。両端楽章の心の底からの共感を窺わせる盛り上がりも素晴らしいが、中間の2つの楽章のニュアンスに満ちた音楽はこの演奏を際立たせており、特筆に値する。音楽の流れや佇まいを歪めることなく、ごく中庸で標準的なテンポを採りながらも、その内容の訴求力は群を抜いている。
A. Nelsons/Boston Symphony Orchestra
第1楽章: 27'21"
第2楽章: 11'39"
第3楽章: 20'33"
第4楽章: 18'52" 
鮮やかでまろやかな高級感のある演奏。極上の響きで、技術上の欠点は皆無。ロシア色が払拭されて洗練された音楽になっており、楽曲構成の緊密さが際立つ格調高い立派な仕上がりに感心する。ただ、バーミンガム市響とのライヴ盤に比べると随分と平均化された普通の音楽。第3楽章の中間部は速過ぎるが、解釈そのものはごく妥当なもの。
V. Neumann/Czech Philharmonic Orchestra
第1楽章: 26'37"
第2楽章: 11'50"
第3楽章: 18'54"
第4楽章: 17'47" 
どこまでもしなやかな美演。特に管楽器の音色には惚れ惚れする。オーケストラはしっかりと鳴っているのだが、無理な強奏をさせることはないため、良い意味で肩の力の抜けた仕上がりになっている。この曲に嫌味を感じる聴き手には薦められる。
G. Noseda/London Symphony Orchestra
第1楽章: 26'58"
第2楽章: 11'07"
第3楽章: 17'42"
第4楽章: 19'13" 
過度に激することのない整然とした理性的な演奏。客観的な解釈と言えるのかもしれないが、淡々とし過ぎてクライマックスの焦点がぼやけているのは大きなマイナスである。技術的な精度もあまり高くない。
大植英次/大阪フィルハーモニー交響楽団
第1楽章: 26'32"
第2楽章: 11'02"
第3楽章: 17'52"
第4楽章: 18'38" 
演奏会当日の客席は大盛り上がりだったが、悪い意味での「スマートで流麗な」演奏は私の好みでは全くなく、一切感情移入することができなかった。これは、ちょっとしたアーティキュレイションやテンポ変化が悉く私の趣味に合わないが故の個人的な感想なので、一般的には集中力の高い熱演、ということになるのだろう。
G. Pehlivanian/Joven Orquesta Nacional de España
第1楽章: 26'45"
第2楽章: 11'42"
第3楽章: 18'19"
第4楽章: 22'39" 
水準の高い熱演。この交響曲の「表の」プロットに疑いもなく全面的に共感しているような潔さは、この交響曲が紛れもない傑作、名曲であることを納得させてくれる。音色に潤いが不足しているため、第2、3楽章に物足りなさは否めないが、両端楽章の完成度と熱い高揚感はユース・オケならではの成果だろう。
V. Petrenko/Royal Liverpool Philharmonic Orchestra
第1楽章: 28'32"
第2楽章: 12'58"
第3楽章: 18'44"
第4楽章: 19'01" 
冒頭からしなやかな流麗さが際立つ。虚仮威し的な見得を切ることはなく、スコアに内在する熱量に応じて音響が膨張収縮するような、極めて自然な音楽である。また、第1楽章展開部では、変奏ごとの和声の変化が繊細に取り扱われており、次第に凶暴性と悲劇性を帯びていく様が見事に表出されている。
V. Polyansky/Russian State Symphony Orchestra
第1楽章: 27'53"
第2楽章: 11'31"
第3楽章: 16'58"
第4楽章: 16'28" 
輝かしく豪壮なロシアン・サウンドが楽しめる。解釈もごくオーソドックスなもので、模範的な演奏と言えるだろう。ただ、それ以上の魅力はあまり感じられず、全曲を一気に聴き通すと少々冗長さが感じられる。
M. Rostropovich/National Symphony Orchestra
第1楽章: 26'23"
第2楽章: 11'25"
第3楽章: 17'26"
第4楽章: 15'58" 
共感に満ちた熱い演奏。すみずみまでエネルギーが漲った力強いスケール大きな仕上がりに、自然と引き込まれる。音色が感じられなかったり、音程やアンサンブルに細かい乱れが聴かれるなど、オーケストラの技術的な不足も感じられるが、この極めて人間的な音楽の前ではあまり気にはならない。ただ、弱奏部で音楽が落ち着かず、若干騒がしさが残っているのが残念。これは、ロストロポーヴィチの指揮にも問題があるのだろう。
G. Rozhdestvensky/Moscow Radio Symphony Orchestra
第1楽章: 25'51"
第2楽章: 9'32"
第3楽章: 16'20"
第4楽章: 16'34" 
ロシアン・サウンド全開のアクの強い演奏。最初から最後まで高血圧的なテンションで演奏されているため、聴き手によって好き嫌いははっきり分かれるだろう。僕は大好き。ただ、ライヴということもあってか仕上がりは悪く、加えて録音がかなり悪い。一般的にはあまり薦められないだろう。
G. Rozhdestvensky/USSR Ministry of Culture State Symphony Orchestra
第1楽章: 27'30"
第2楽章: 10'52"
第3楽章: 17'05"
第4楽章: 19'16" 
非常に巧みな演奏。響きはいつもながら強烈なものだが、音楽そのものは意外にもスマートな流れを感じさせる。壮大な音響と過度に甘美な抒情のどちらにも溺れることなく、スコアを丁寧に紐解いていくような解釈が面白い。特に第1楽章展開部で、その巧さが光っている。この曲に対する既成概念そのものの巨大な響きの下から、複雑な人間感情が浮かび上がってくるのが素晴らしい。
M. Shostakovich/London Symphony Orchestra
第1楽章: 29'33"
第2楽章: 11'03"
第3楽章: 21'23"
第4楽章: 19'19" 
散漫な演奏。大きな破綻があるわけではないが、この長大な交響曲を一気に聴かせるようなまとまりには欠ける。力任せに強奏するばかりで、中間楽章の弱奏部分に説得力が全くない。
M. Shostakovich/Prague Symphony Orchestra
第1楽章: 27'11"
第2楽章: 11'13"
第3楽章: 20'09"
第4楽章: 19'22" 
バンダの非力さに苦笑。第1楽章、展開部後半のアンサンブルは特に酷い。第2楽章、第3楽章共に中間部の出来が悪い。第4楽章の249〜250小節が編集ミスで重複している。
L. Slovák/Czech-Slovak Radio Symphony Orchestra
第1楽章: 26'05"
第2楽章: 10'12"
第3楽章: 19'20"
第4楽章: 16'40" 
ソツなくまとめられた演奏。決して上手なオーケストラではないが、真摯に取り組んでいる様子が窺える。ただ、鳴りが今一つなのは大きな欠点。この曲が本来持っている有無を言わせぬような高揚感に不足している。もっとも、この類いの演奏を好む聴き手も少なくはないだろう。
W. Steinberg/Buffalo Philharmonic Orchestra
第1楽章: 26'05"
第2楽章: 11'01"
第3楽章: 17'21"
第4楽章: 14'55" 
淡々とした、“楽天的”な演奏。この曲がどのように受容されていたのかを端的に示している。オーケストラは決して技量は高くないが、十分に健闘している。しかしながら、この長大な曲を聴き通すには単調な内容。録音も悪い。
L. Stokowski/NBC Symphony Orchestra
第1楽章: 28'07"
第2楽章: 10'47"
第3楽章: 17'54"
第4楽章: 15'32" 
初演直後の歴史的な放送録音。トスカニーニの演奏よりも作品の内容をよく捉えているが、ややロマンティックで古風なスタイルに違和感が残る。録音もかなり悪い。
E. Svetlanov/USSR State Symphony Orchestra
第1楽章: 25'50"
第2楽章: 10'04"
第3楽章: 18'38"
第4楽章: 20'28" 
スヴェトラーノフが、ソヴィエト国立響の常任指揮者に就任して間もない頃の録音。曲と演奏者の相性が非常に良く、ツボにハマった表現に納得させられる。盛り上がった部分で臆面もなく歌い上げるだけではなく、弱奏部での緊張感も模範的だ。オーケストラに荒っぽい部分が散見されるものの、共感に満ちた歌が全編に聴かれて大変魅力的。中でも第3楽章のクライマックスは素晴らしい。「レニングラード交響曲はかくあるべし」とでもいえるような演奏。
E. Svetlanov/USSR State Symphony Orchestra
第1楽章: 28'20"
第2楽章: 10'59"
第3楽章: 18'15"
第4楽章: 18'25" 
10年前のスタジオ録音と解釈そのものに大きな違いは聴かれない。第1楽章展開部の巧みな作りなどにこのコンビの成熟を聴き取ることもできるが、それよりはむしろ、ライヴならではの大柄な熱気こそがこの盤最大の魅力だろう。ただ例えば第2楽章中間部のピッコロClのように、壮絶なミスが少なからず存在するのは残念。完成度も含めて評価すれば、スタジオ録音があれば十分ということになるだろう。もちろん、ファンとしては聴き逃すわけにはいかない演奏であることは言うまでもない。
E. Svetlanov/Swedish Radio Symphony Orchestra
第1楽章: 29'01"
第2楽章: 11'03"
第3楽章: 17'58"
第4楽章: 18'46" 
前半2つの楽章は今一つだが、後半は集中力に満ちた素晴らしい演奏。手兵のロシア国立響でないにもかかわらず、いつもどおりの華麗なロシアン・サウンドを聴かせるところがさすが。全体に重厚なテンポをとりつつも、引き締まったリズムで弛緩するところがない。壮大かつ強烈な強奏も実に効果的。作品に込められたメッセージを提示するというよりは、ひたすら壮麗な響きを積み重ねていくところが、いかにもスヴェトラーノフらしい。終楽章コーダは圧巻。最終和音の引き延ばしに興奮しない者がいるのだろうか!
E. Svetlanov/Residentie Orkest the Hague
第1楽章: 26'11"
第2楽章: 11'01"
第3楽章: 17'15"
第4楽章: 18'43" 
スウェーデン放送響とのライヴ録音とほぼ同時期のライヴ録音。当然のことながら、音楽の作りに大きな差異は見られない。第1楽章の所要時間が3分近く短くなっているが、それほど速いようには感じられない。ただ、残念ながらオーケストラの技量が劣るため、スウェーデン放送響盤に勝る部分は見出せない。
E. Tabakov/Bulgarian National Radio Symphony Orchestra
第1楽章: 27'19"
第2楽章: 10'52"
第3楽章: 18'33"
第4楽章: 17'43" 
過度の思い入れによるテンポ変化を排し、主として強弱の周到な設計で聴かせる即物的な解釈である。全体に長調の明るい響きが支配的なせいか、際限なく肥大するクライマックスの威力が凄まじい。ただ、オーケストラの機能面の弱さも露呈しており、特にホルンをはじめとする金管楽器の不安定さが気になる。
Y. Temirkanov/St. Petersburg Philharmonic Orchestra
第1楽章: 27'55"
第2楽章: 10'26"
第3楽章: 19'34"
第4楽章: 18'28" 
いかにも現代風の洗練されたスマートな演奏。クライマックスでもいたずらに大音響を炸裂させることはない。どちらかといえば中間楽章の弱奏部に対する思い入れが強いようだ。いわゆる『証言』的演奏といえるだろうが、オーケストラのロシアン・サウンドの故にその印象はあまり強くない。しかしながら、全体にどこか集中力に欠けているようにも感じられ、オーケストラの完成度もそれほど高くはない。
Y. Temirkanov/St. Petersburg Philharmonic Orchestra
第1楽章: 28'40"
第2楽章: 10'19"
第3楽章: 13'52"
第4楽章: 18'51" 
旧盤と違って、バランスの取れた解釈とオーケストラの堅実な統率力が光る、聴き応えのある熱演である。中間楽章のテンポも、第2楽章の中間部こそ少し速く感じられるものの、基本的にスコア通り。結局のところ、この作品にはこういうロシアの正統的な重量級の響きと解釈こそが相応しい。
A. Toscanini/NBC Symphony Orchestra
Total Time: 76'57" 
アメリカ初演時の歴史的録音。トスカニーニについては『証言』で酷評されているが、この演奏を聴くとそれがよく分かる。ひたすら攻撃的な音響を繰り広げる演奏は確かにある種の説得力を持っているが、そこにはショスタコーヴィチの美質を聴き取ることはできない。また、緩徐楽章での歌い回しは意図的なフレージングやアーティキュレーションの改変で、別の音楽となっている。これはトスカニーニの音楽を聴くべき録音であって、ショスタコーヴィチではない。
M. Wigglesworth/BBC National Orchestra of Wales
第1楽章: 29'03"
第2楽章: 12'09"
第3楽章: 19'06"
第4楽章: 18'30" 
強音は汚く、弱音は緊張感がないという典型的な演奏。テンポ設定などにはあまり不満はないが、冒頭からいきなり乱暴な音がしているのに閉口する。オーケストラの力量もあるのだろうが、やはり指揮者の責任が大きい。第4楽章のコーダでヴァイオリンに意味不明のポルタメントをかけさせる趣味の悪さも気に入らない。
J. Winkler/FDJ-Sinfonieorchester der Hochschulen für Musik
時間不詳
旧東独における青年音楽祭でのライヴ録音。学生オーケストラのようだが、東独の団体らしい渋い響きを持っているのが興味深い。ただ、気持ちは十分に分かるものの、技術的にはやはり不満が残る。特に第1楽章中間部の小太鼓は聴くに耐えない。目指している音楽そのものは決して悪くないだけに、残念。
D. Yablonsky/Russian Philharmonic Orchestra
第1楽章: 25'43"
第2楽章: 11'27"
第3楽章: 18'11"
第4楽章: 19'57" 
両端楽章は考えすぎた結果、力不足を露呈してしまった部分もなきにしもあらずだが、中間楽章の熱い共感に満ちた音楽は立派なもの。全体としては落ち着いた交響曲の佇まいを持った佳演に仕上がっている。

 作品リストに戻る


 ShostakovichのHome Pageに戻る

Last Modified 2023.12.18

inserted by FC2 system