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交響曲第6番 ロ短調 作品54

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指揮者オーケストラ録音年レーベル番号備考評価
ASHKENAZY, VladimirRoyal Philharmonic Orchestra1988LondonPOCL-1006
BARSHAI, RudolfWDR Sinfonieorchester1995Brilliant6324Brilliant-8128
BERGLUND, PaavoBournemouth Symphony Orchestra1978EMICDS 7 47790 8
BERNSTEIN, LeonardNew York Philharmonic1963SONYSMK 47614
BERNSTEIN, LeonardVienna Philharmonic Orchestra1986DGPOCG-1600Live(Oct.)
BOREYKO, AndreyRadio-Sinfonieorchester Stuttgart des SWR2011hänsslerCD 93.303Live(17-18 Nov.)
BOULT, AdrianLondon Philharmonic Orchestra
EverestEVC 9005
CAETANI, OlegOrchestra Sinfonica di Milano Giuseppe Verdi2002Arts47668-2Live(Jan.)
CHUNG, Myung-WhunRundfunk-Sinfonieorchester Saarbrücken1985KochCD 311202 G1
FEDOSEEV, VladimirMoscow Radio Symphony Orchestra1992MUSICA780003-2
FEDOSEEV, VladimirMoscow Radio Symphony Orchestra1997CANYONPCCL-00401
GAUK, AlexsandrUSSR Radio Symphony Orchestra1959MKD4894-510" mono
GERGIEV, ValeryKirov Orchestra2002Philips470 841-2Live(14-18 May)
GERGIEV, ValeryMariinsky Orchestra2013MariinskyMAR0545SACD, Live(23 & 26 June)
HAITINK, BernardConcertgebouw Orchestra, Amsterdam1985LondonPOCL-9255/66
INBAL, EliahuWiener Symphoniker1991DenonCOCO-78968
INOUE, MichiyoshiSt. Petersburg Symphony Orchestra2007Octavia RecordsOVCL00777Live(4 Nov.)
JANSONS, MarissOslo Philharmonic Orchestra1991EMITOCE-8098
JANSONS, MarissSymphonieorchester des Bayerischen Rundfunks2013BR Klassik900123Live(18-21 Mar.)
JÄRVI, NeemeScottish National Orchestra1985ChandosCHAN 8411
JÄRVI, PaavoEstonian Festival Orchestra2016AlphaALPHA389
JUROWSKI, VladimirRussian National Orchestra2004PentaTone ClassicsPTC 5186 068SACD
JUROWSKI, VladimirLondon Philharmonic Orchestra2013London Philharmonic OrchestraLPO-0080Live(17 May)
KEGEL, HerbertRundfunk-Sinfonieorchester Leipzig1973WeitblickSSS0040-2Live(25 Sept.)
KITAENKO, DmitriGürzenich-Orchester Köln2002Capriccio71 029SACD
KLEINERT, RolfBerliner Rundfunk-Sinfonie-Orchester1967Eterna8 25 928LP
KONDRASHIN, KirilMoscow Philharmonic Orchestra1967AltusALT046Live(18 Apr.).
KONDRASHIN, KirilRoyal Concertgebouw Orchestra1968Philips438 283-2Live(21 Jan.), RCO 05001
KONDRASHIN, KirilMoscow Philharmonic Symphony Orchestra1972VictorVICC-40094/103Melodiya-MEL CD 10 01065
KONDRASHIN, KirilSwedish Radio Symphony Orchestra1977BISBIS-LP-331/333LP, Live(13 Oct.). 3rd mov. only.
KONDRASHIN, KirilIsrael Philharmonic Orchestra1980HeliconHL 02-9679Live(Apr.).
LITTON, AndrewDallas Symphony Orchestra2000DelosDE 3283
MRAVINSKY, EvgenyLeningrad Philharmonic Orchestra1946BMG(J)BVCX-4016Melodiya-D030615-16(LP)
MRAVINSKY, EvgenyLeningrad Philharmonic Orchestra1965VictorVICC-40118/23Live(21 Feb.), Icone-ICN-9404-2, Scribendum-SC 031, Melodiya-C10-12955-8(LP, 2nd & 3rd mov. only)
MRAVINSKY, EvgenyLeningrad Philharmonic Orchestra1972Russian DiscRDCD 10910Live(27 Jan.), BMG-74321 25198 2, Praga-PR 254017
NELSONS, AndrisBoston Symphony Orchestra2017DG483 6728Live(Apr.-May)
NOSEDA, GianandreaLondon Symphony Orchestra2019LSOLSO0878Live(31 Oct.), SACD
PENDERECKI, KrzysztofOrchestra Giovanile Italiana1987Nuova Era033.6705Live(7 June)
PETKOV, DobrinPlovdiv State Philharmony
BalkantonBCA 10212LP
PETRENKO, VasilyRoyal Liverpool Philharmonic Orchestra2010Naxos8.572658
POLYANSKY, ValéryRussian State Symphony Orchestra1999ChandosCHAN9813
PREVIN, AndréLondon Symphony Orchestra1973EMICDM 7 69564 2
REINER, FritzNew York Philharmonic Orchestra1943ASdiscAS 628Live(15 Aug.)
REINER, FritzPittsburgh Symphony Orchestra1945SonyMHK 62343Dante-LYS 093
ROSTROPOVICH, MstislavNational Symphony Orchestra1994Teldec4509-95070-2
ROZHDESTVENSKY, GennadyBBC Symphony Orchestra1980BBCBBCL 4242-2Live(10 Dec.)
ROZHDESTVENSKY, GennadyUSSR Ministry of Culture State Symphony Orchestra1983VictorVICC-40001/11Icon-ICN-9415-2
SANDERLING, KurtBerliner Sinfonie-Orchester1979Deutsche Schallplatten32TC-262
SANDERLING, MichaelDresdner Philharmonie2015Sony88875164052
SHOSTAKOVICH, MaximPrague Symphony Orchestra1999SupraphonSU 3415-2 031Live(2 Mar.), Supraphon-SU 3890-2
SKROWACZEWSKI, StanislawHallé Orchestra1997HalléCD HLL 7506Live(7 Nov.)
SLOVÁK, LadislavCzecho-Slovak Radio Symphony Orchestra1989Naxos8.550626
STOKOWSKI, LeopoldPhiladelphia Orchestra1940dell'ArteCD DA 9023Dutton-CDAX 8017, Memories-MR2541/2544(Live (8 and 22 Dec.))
STOKOWSKI, LeopoldChicago Symphony Orchestra1968BMG09026-62516-2
SVETLANOV, EvgeniUSSR State Symphony Orchestra1980MelodiyaC 10-14899-900LP
TABAKOV, EmilBulgarian National Radio Symphony Orchestra2009Gega NewGD 385
TEMIRKANOV, YuriLeningrad Philharmonic Orchestra1977MelodiyaC10-09675-76LP
TEMIRKANOV, YuriSt. Petersburg Philharmonic Orchestra1996RCA09026 68844 2
TEMIRKANOV, YuriSt. Petersburg Philharmonic Orchestra2006WarnerWPCS-11947Live(4 Jan.)
WIGGLESWORTH, MarkBBC National Orchestra of Wales1997BISBIS-CD-973/974

V. Ashkenazy/Royal Philharmonic Orchestra
第1楽章: 18'17"
第2楽章: 5'50"
第3楽章: 6'47" 
肩の力が抜けた、自然で聴きやすい演奏。妙な重苦しさも、尋常ならざる喧騒もない。強烈な嫌味がないので、入門用には最適だろう。それなりに曲の内容も表出されている。管楽器の音程や技術が気になる部分もないわけではないが、まずは無難に手堅くまとめられているといえる。
R. Barshai/WDR Sinfonieorchester
第1楽章: 18'50"
第2楽章: 5'47"
第3楽章: 7'01" 
よく整えられたアンサンブルと、ツボを押さえた踏み込みが光る解釈とが魅力的な好演。音程はお世辞にも良いとは言えないが、オーケストラも十分に指揮者の要求に応えている。ただ、表面的な技巧上の快感に終始する部分も多く、特に第1楽章のように瞑想性の高い部分については物足りなさを感じなくもない。
P. Berglund/Bournemouth Symphony Orchestra
第1楽章: 17'36"
第2楽章: 5'55"
第3楽章: 6'32" 
自然で無理のないテンポ設定から繰り出される音楽の流れが傑出している。加えて、熱い共感に満ちた燃焼度の高さも際立つ。ベリルンドの解釈はこの作品の魅力を実に素直な形で描き出している。オーケストラの技術的な限界は散見されるものの、音楽的な価値を傷付けてはいない。文字通りあらゆる演奏の規範となる必聴の名演。
L. Bernstein/New York Philharmonic
第1楽章: 18'56"
第2楽章: 7'25"
第3楽章: 7'04" 
重心の低い、バーンスタイン独特の解釈。この曲との相性はそれほど良いようには思われないが、それなりに聴かせてしまうところはさすが。オーケストラの名技をひけらかすような部分は皆無なので物足りなさを感じる部分もあるが、特に第1楽章などはしっかりとした内容を持っている。第2楽章はやや退屈。
L. Bernstein/Vienna Philharmonic Orchestra
第1楽章: 22'29"
第2楽章: 7'53"
第3楽章: 7'32" 
ユニテル社によるヴィデオの音声。バーンスタインの晩年様式で塗り固められている。第1楽章などは独特の美しさと深さを持っているが、全体に鈍重でこの曲の魅力が発揮されているとは言いがたい。ウィーン・フィルはさすがに美しい音色で聴かせるが、技術的には危なっかしいところも散見される。バーンスタインを聴くべき演奏である。
A. Boreyko/Radio-Sinfonieorchester Stuttgart des SWR
第1楽章: 19'16"
第2楽章: 6'16"
第3楽章: 7'09" 
丁寧かつ流麗で、バランスのとれた優れた演奏。明晰かつ流麗な音楽が心地よい。リズムの面白さ、旋律の美しさが手堅くも自然に表出されている。思いの外、疾走感がなく落ち着いた演奏だが、この辺りがボレイコの個性なのかもしれない。
A. Boult/London Philharmonic Orchestra
第1楽章: 19'56"
第2楽章: 5'38"
第3楽章: 7'14" 
雰囲気は良い。時折見せるケレン味たっぷりの表情も楽しい。ただ全体を通して聴いた時に、聴き手を惹きつけるような突き抜けたものがない。オーケストラの技量がもっと卓越していれば違う結果になったかもしれない。解釈自体は真摯なものだけに惜しい。
O. Caetani/Orchestra Sinfonica di Milano Giuseppe Verdi
第1楽章: 17'28"
第2楽章: 6'42"
第3楽章: 6'45" 
極めて自然な音楽の流れが好ましい。あっさりとした音楽作りは、後半の楽章での諧謔味に乏しい側面もあるが、交響曲としてのまとまりを感じさせてくれる。オーケストラが技術面での切れ味に欠けるのは惜しいが、全体的にはなかなかの好演といえるだろう。
M. Chung/Rundfunk-Sinfonieorchester Saarbrücken
第1楽章: 17'08"
第2楽章: 6'06"
第3楽章: 6'51" 
オーケストラが今一つ冴えないが、颯爽とした仕上がりになっている。オーケストラに無理をさせず伸び伸びと歌わせながらも、随所で手堅く引き締めているところにチョンの非凡な手腕を聴き取ることができる。交響曲としての造形にも不足していない。
V. Fedoseev/Moscow Radio Symphony Orchestra
第1楽章: 15'59"
第2楽章: 5'46"
第3楽章: 8'30" 
オーケストラの技術は十分堪能できる。個人的に大好きなのは、第1楽章再現部に入るところのホルン・ソロ。これは良い。恍惚としてしまう。ただ、フェドセーエフの音楽自体にはあまり共感を誘われない。第1楽章は何を言いたいのかよく分からないし、第2楽章もうまくまとめただけ。第3楽章の非常にゆったりとしたテンポにも、これといった説得力はない。
V. Fedoseev/Moscow Radio Symphony Orchestra
第1楽章: 15'20"
第2楽章: 6'21"
第3楽章: 8'45" 
1992年盤と比較して、その音楽の深まりに驚かされる。テンポ自体は若干遅くなっているのだが、密度が非常に高いので退屈することがない。第1楽章の雄弁さは特に素晴らしい。何と大きなスケールの音楽なのであろうか。各奏者の名技も堪能できる。そして、オーケストラの響きの美しいこと!個人的にはもっと早いテンポを望みたい第2楽章も、全ての音符が丁寧に弾き込まれており、このテンポでなければならないという強い説得力を感じる。第3楽章だけは、あまりにエキセントリックに過ぎて、僕には受け入れることができない。ただし、細かい部分に凝っているので、それなりに楽しむことはできるのだが…。
A. Gauk/USSR Radio Symphony Orchestra
時間不詳
このコンビらしい、勢いに満ちた佳演。アンサンブル面での荒っぽさよりも、特に管楽器の泥臭く個性的な音色、一体感のあるノリの立派さを評価したい。第1楽章の響きは相当雰囲気がよく、今一つ深みのない解釈を補ってあまりある。第2楽章以降における巨象の突進のような音楽も魅力的。ただし、ロシアのローカル色が強い演奏を好まない向きには、全く受け入れられないかもしれない。
V. Gergiev/Kirov Orchestra
第1楽章: 14'26"
第2楽章: 6'47"
第3楽章: 6'40" 
ゲールギエフは緊張感に満ちた壮大な冒頭から華やかで楽しい終わりに至るまで、流麗かつ繊細で見事な処理を行い、オーケストラの名技を存分に味わうに相応しい音楽に仕立て上げている。それはまるで、交響曲というよりは協奏曲を思わせる。まさにゲールギエフの面目躍如といったところ。
V. Gergiev/Mariinsky Orchestra
第1楽章: 18'38"
第2楽章: 5'16"
第3楽章: 6'31" 
第1楽章の重厚で彫りの深い音楽が秀逸。「頭のない交響曲」などと呼ばれる作品だが、それは第1楽章にテンポの速い部分が一切ないということだけで、この演奏を聴けば第5番や第8番の第1楽章の音楽世界と同一であることがよく分かる。第2楽章以降も鮮やかな演奏で悪くないが、この第1楽章を受けるにはあまりに特徴がなさ過ぎるように思われる。
B. Haitink/Concertgebouw Orchestra, Amsterdam
第1楽章: 17'44"
第2楽章: 6'20"
第3楽章: 7'06" 
すみずみまで丁寧に仕上げられた秀演。オーケストラの美しい響きと、ハイティンクの確かな造形力が光る。ロシア風のアクの強さとは無縁だが、奇を衒わないテンポ設定と歌い回しが、素直にこの作品の真価を味あわせてくれる。あえて注文をつけるならば、第1楽章には更なる深い情感を、第2楽章にはもっと鋭い皮肉が欲しいところ。とはいえ、十分に魅力的な演奏である。
E. Inbal/Wiener Symphoniker
第1楽章: 20'22
第2楽章: 6'35"
第3楽章: 7'09" 
スコアの細部まで目が行き届いた、緻密な演奏。響きもなかなか美しい。しかし、実際の時間よりもずっと遅く感じられるテンポはいただけない。推進力を意図的に殺すことによってショスタコーヴィチの音楽が持つ陰気な側面を強調しようという考え方なのかもしれないが、作曲家が周到に構成した絶妙のバランスを壊す結果にしかなっていない。
井上道義/St. Petersburg Symphony Orchestra
第1楽章: 14'58
第2楽章: 6'42"
第3楽章: 7'52" 
落ち着いたテンポ設定には意図があるのだろうが、細部まで彫琢が極められているというほどではなく、やや消化不良感が残る。
M. Jansons/Oslo Philharmonic Orchestra
第1楽章: 15'20"
第2楽章: 5'47"
第3楽章: 6'39" 
早目のテンポによる颯爽とした演奏。テンポ設定はムラヴィーンスキイと似た感じ。しかし第1楽章など、その内容には残酷なほどの格の差がある。端正にまとめられた整然たる音響自体はなかなか優れているので、それなり楽しめはする。
M. Jansons/Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks
第1楽章: 15'41"
第2楽章: 6'21"
第3楽章: 7'42" 
まさに横綱相撲といった感じの堂々たる演奏。いずれの楽章も落ち着いたテンポでじっくりと表現されており、豊かな内容を持った音楽に仕上がっている。とはいえ、かつての「巨匠」然とした演奏とは異なり、終始淀みのない音楽の流れが特徴的で、スピード感こそないが、味わい深くも颯爽とした高揚感のある熱い演奏である。
N. Järvi/Scottish National Orchestra
第1楽章: 17'28"
第2楽章: 5'52"
第3楽章: 6'33" 
悪くない。特に第2、3楽章は立派な出来。決して技術的にずば抜けているわけではないオーケストラから、ショスタコーヴィチ特有のアクの強い音色を引き出しながらも堅実にまとめあげてるヤルヴィの手腕は素晴らしい。ただ、第1楽章があまりにも平凡な音楽。透徹した緊張感や、微細なニュアンスを表出するところまでは至らなかったということか。あるいは、そこまでスコアから感じ取ることはできなかったのか。
P. Järvi/Estonian Festival Orchestra
第1楽章: 18'23"
第2楽章: 6'11"
第3楽章: 6'37" 
颯爽としつつも聴き映えのするメリハリが利いた、格好良い演奏。成立背景に特記すべき事項のない「純音楽的」な作品だけに、こうした全方位にバランスの取れたアプローチは効果的である。ただ、終楽章にはもう少し爆発力が漲る狂乱を求めたいところ。
V. Jurowski/Russian National Orchestra
第1楽章: 19'59"
第2楽章: 5'15"
第3楽章: 7'11" 
端正な音楽作りに好感が持てる。内面に熱気を孕んだ洗練された音楽の流れはなかなかのものだが、全体に研ぎ澄まされた緊張感が感じられず、結果として淡々とした印象しか残らないのが惜しい。オーケストラの音程の不安定さも気になる。
V. Jurowski/London Philharmonic Orchestra
第1楽章: 17'04"
第2楽章: 5'50"
第3楽章: 6'47" 
旧盤よりも、はるかに良い仕上がりである。第1楽章こそやや平坦な音楽だが、引き締まったリズムと堅実なアンサンブルに立脚した、決して勢い任せに激することのない、それでいてクライマックスに向けて弛むことなく熱量を増していく様は、聴き手を自然に熱狂へと誘う。
H. Kegel/Rundfunk-Sinfonieorchester Leipzig
第1楽章: 17'37"
第2楽章: 6'05"
第3楽章: 7'00" 
躁と欝とが同居するこの曲を、どちらかと言えば欝の部分に重みをおいて解釈したような演奏。第2楽章以降の喧騒も、盛り上がれば盛り上がるほど気分が晴れない辺りに、ケーゲルが見抜いたこの作品の本質が伺える。オーケストラには不満が残るが、概ね安定した演奏。
D. Kitaenko/Gürzenich-Orchester Köln
第1楽章: 19'06"
第2楽章: 6'19"
第3楽章: 7'14" 
じっくりと丹念に音を紡ぐ第1楽章がなかなか素晴らしい。地味な音色のオーケストラながらも、スコアの多彩な響きが十分に再現されている。これは、録音の良さも多分に影響しているのだろう。それに比べると、第2楽章以降は今一つ。第1楽章と似たような姿勢で取り組んだためか、鈍重さが否めない。第3楽章のチューバの生々しさは素敵。
R. Kleinert/Berliner Rundfunk-Sinfonie-Orchester
時間不詳
端正にまとめられた好感の持てる演奏。トランペットの輝かしい響きは結構好み。ただ、弱奏部が若干ざわつき気味で静謐感に欠けるのはオーケストラの技量ゆえなのか、惜しい。解釈そのものはオーソドックスで模範的なもの。
K. Kondrashin/Moscow Philharmonic Orchestra
第1楽章: 12'58"
第2楽章: 6'02"
第3楽章: 6'43" 
東京でのライヴ録音。歴史的な価値は言うまでもないが、純粋に演奏内容だけを考慮しても一級品。一見素っ気無さを感じさせる流れの中に、ともすれば野暮ったくなりかねない濃厚な歌が息づいている。全体にスケールの大きな名演で、細かい瑕を気にさせない説得力と確信に満ちた音楽が素晴らしい。ティンパニに代表される強烈な打ち込みにも、単なるローカル色の発現にとどまらない意味深さがある。録音状態は万全ではないが、この作品の魅力を十分に伝えてくれる。
K. Kondrashin/Royal Concertgebouw Orchestra
第1楽章: 12'51"
第2楽章: 5'58"
第3楽章: 6'53" 
颯爽としたテンポで、荒々しい響きを引き出すコンドラーシンらしい演奏。ロシアのオーケストラでない不満をほとんど感じさせない。ライヴゆえの瑕が散見されるものの、第1楽章の多彩な表情はスタジオ録音を凌ぐ。
K. Kondrashin/Moscow Philharmonic Symphony Orchestra
第1楽章: 13'27"
第2楽章: 6'07"
第3楽章: 6'52" 
このコンビらしい勢いに満ちた秀演。特に後半2つの楽章が出色の出来。厳しいながらもどこか野暮ったさを滲ませた独特のスピード感が、この作品の本質を図らずも描き出している。細かい瑕が皆無とは言えないが、なかなか魅力的な演奏。ただ、第1楽章はやや一本調子にすぎるか。
K. Kondrashin/Swedish Radio Symphony Orchestra
第1楽章:  
第2楽章:  
第3楽章: 6'42" 
響きの志向と容赦のないテンポ設定が、いかにもコンドラーシンらしい。ライヴゆえの瑕はあるが、残りの2つの楽章も聴きたいと思わせるに足る演奏である。
K. Kondrashin/Israel Philharmonic Symphony Orchestra
第1楽章: 13'41"
第2楽章: 6'35"
第3楽章: 7'07" 
コンドラーシンの他の録音と同様に引き締まった鋭さと無慈悲な推進力が際立つが、技術的なもたつきに起因すると推察される弛みが散見されるのが惜しい。
A. Litton/Dallas Symphony Orchestra
第1楽章: 17'46"
第2楽章: 5'27"
第3楽章: 6'43" 
E. Mravinsky/Leningrad Philharmonic Orchestra
第1楽章: 17'43"
第2楽章: 5'46"
第3楽章: 7'04" 
テンポ設定など基本的な解釈はその後の録音とあまり変わらないが、まだオーケストラの技量が低く、2、3楽章でアンサンブルに破綻を来たしている部分が散見されるのが残念。また、1楽章後半のフルート・ソロが、気ままに崩した感じで吹いているのが納得できない。
E. Mravinsky/Leningrad Philharmonic Orchestra
第1楽章: 14'56"
第2楽章: 5'26"
第3楽章: 6'43" 
第1楽章の透徹した音楽、第2楽章の諧謔、第3楽章のスピード感、いずれをとってもムラヴィーンスキイの本領が発揮された名演。オーケストラの名技にも舌を巻く。しかもこれでライヴとは!全編をつらぬく勢いと緊張感において、出色の演奏。
E. Mravinsky/Leningrad Philharmonic Orchestra
第1楽章: 16'01"
第2楽章: 5'31"
第3楽章: 6'53" 
一段とスケールの大きい、風格のある演奏。第1楽章の(ムラヴィーンスキイにしては)ゆったりとしたテンポも説得力に満ちている。第2、3楽章はその快速なテンポにもかかわらず、自然で落ち着いた音楽になっている。もちろん、そこに凝縮された音楽的意味は異常なまでに深いものであるが、この曲のアプローチとしては1965年のライヴ盤の凄まじい勢いの方が好ましいように思われる。終楽章のヴァイオリン・ソロは、こちらの方が素晴らしい。
A. Nelsons/Boston Symphony Orchestra
第1楽章: 19'39"
第2楽章: 6'24"
第3楽章: 7'11" 
鮮やかでまろやかな高級感のある演奏。極上の響きで、技術上の欠点は皆無。ロシア色が払拭されて洗練された音楽になっており、楽曲構成の緊密さが際立つ格調高い立派な音楽と感心しつつも、時にもっとささくれ立った刺々しさも欲しいと思ってしまうが、それはきっと時代遅れな感覚なのだろう。
G. Noseda/London Symphony Orchestra
第1楽章: 17'42"
第2楽章: 6'37"
第3楽章: 7'30" 
丁寧ながらも生気に満ちた演奏。第1楽章では、静謐さに欠けるのは否めないものの、起伏に富んだスケールの大きな音楽となっている。しかしながら第2楽章以降は、悪くはないものの平凡な出来である。
K. Penderecki/Orchestra Giovanile Italiana
第1楽章: 19'16"
第2楽章: 6'24"
第3楽章: 7'43" 
垢抜けない演奏。音楽にスピード感がないが、かといって悲劇性や深い静寂を感じさせるというわけでもない。決して一流とはいえないオーケストラを手堅くまとめているのは立派だが、それだけでは魅力的な演奏にはなり得ない。
D. Petkov/Plovdiv State Philharmony
時間不詳
野趣溢れる素朴で武骨な響きで奏でられる第1楽章はなかなかに味わい深いが、第2楽章以降は技術的な問題に起因するリズムの悪さが目立ち、残念ながら十分に楽しむことができない。
V. Petrenko/Royal Liverpool Philharmonic Orchestra
第1楽章: 19'45"
第2楽章: 5'54"
第3楽章: 7'09" 
独特の構成のいびつさを感じさせることのない、ペトレンコの手腕に感心する。特に第1楽章の響きの美しさは秀逸。ただ、第2楽章以降はオーケストラの技量が影響しているのか、全体にもたつく感じが気になる。
V. Polyansky/Russian State Symphony Orchestra
第1楽章: 19'04"
第2楽章: 6'23"
第3楽章: 7'09" 
無難な仕上がりだが、音楽にコクのようなものが感じられず、あっさりと流れていくのが物足りない。オーケストラの技術的な仕上がりも意外に丁寧ではない。
A. Previn/London Symphony Orchestra
第1楽章: 19'20"
第2楽章: 7'16"
第3楽章: 7'04" 
地に足のついた、格調高い立派な演奏。オーケストラが無理なく意味深い音を積み上げているのに感心する。全体に爽やかな抒情が支配しているが、それに溺れてしまわない節度にプレヴィンのセンスの良さを感じる。嫌味の感じられない響きも、広く受け入れられることだろう。もちろん、曲の魅力は全く損なわれていない。
F. Reiner/New York Philharmonic Orchestra
第1楽章: 21'30"
第2楽章: 6'30"
第3楽章: 7'25" 
古いライヴ録音だけに音色感などを鮮明に聴き取ることはできないが、いかにもライナーらしい引き締まった造形の確かさが光る。正規録音に比べると第1楽章がかなりゆったりしているが、冗長ということはない。
F. Reiner/Pittsburgh Symphony Orchestra
第1楽章: 18'27"
第2楽章: 6'31"
第3楽章: 7'23" 
しっかりと曲の内容を把握した、ライナーの引き締まった音楽が立派。特に第1楽章が聴かせる。全体に落ち着いた仕上がりだが、緊張感に不足しないところがライナーらしいと言えるだろう。ただ、オーケストラの技術が不足していることと、録音もそれほど優れないのが残念。せめてもっと優秀なオーケストラとの演奏で聴きたいと思わせられる。
M. Rostropovich/National Symphony Orchestra
第1楽章: 18'31"
第2楽章: 5'32"
第3楽章: 6'37" 
音楽の彫りはあまり深くないが、それなりにメリハリが効いていて楽しく聴くことができる。これといったセールスポイントはないが、ごく標準的な演奏といえるだろう。
G. Rozhdestvensky/BBC Symphony Orchestra
第1楽章: 15'38"
第2楽章: 6'28"
第3楽章: 7'24" 
とても素晴らしい仕上がりである。第1楽章の冒頭から燃焼度の高い集中力が途切れることなく、全曲を一気に聴かせる。第2楽章以降はそれほど速いテンポではないのだが音楽が弛緩することは全くなく、アクの強い節回しが悉くツボにはまる、ロジデーストヴェンスキイの真骨頂が存分に発揮されている。オーケストラも健闘している。
G. Rozhdestvensky/USSR Ministry of Culture State Symphony Orchestra
第1楽章: 17'09"
第2楽章: 6'36"
第3楽章: 7'20" 
曲の本質をしっかりと捉えた充実した秀演。特に第2楽章以降が楽しい。第3楽章コーダのティンパニの超強打みたいなアクの強い響きに耳を奪われがちだが、巨象がダンスしているような独特のリズム感や、刺激的な楽器間のバランスなど、聴けば聴く程巧妙な仕掛けに感心させられる。強烈な音響にひるむことなく、耳を傾けたい演奏である。
K. Sanderling/Berliner Sinfonie-Orchester
第1楽章: 18'54"
第2楽章: 6'16"
第3楽章: 7'06" 
内容のぎっしりとつまった、極めて充実した演奏。派手さとは無縁だが、全ての音に深い意味が盛り込まれており、まさに息もつかせずに聴かせてくれる。特に第1楽章に関しては、ムラヴィーンスキイをも凌ぐ。典型的なドイツ・サウンドも渋くて、この曲によくマッチしている。
M. Sanderling/Dresdner Philharmonie
第1楽章: 17'41"
第2楽章: 6'11"
第3楽章: 7'34" 
機能的には水準以上の仕上がりであるものの、リズム要素の扱いに精彩を欠いているようで、速い楽章にもたつくような鈍重さが否めない。一方で緩徐楽章はあっさりとしているので、全体としては中途半端な印象が拭えない。
M. Shostakovich/Prague Symphony Orchestra
第1楽章: 18'51"
第2楽章: 6'34"
第3楽章: 6'47" 
全体に安定した仕上がり。オーケストラも健闘しており、ソツなくまとまっている印象を受ける。第1楽章の静謐感はマクシームの成長を窺わせるが、第2楽章以降のややもたついたようなリズム感は相変わらず。
S. Skrowaczewski/Hallé Orchestra
第1楽章: 16'41"
第2楽章: 5'28"
第3楽章: 6'42" 
颯爽とした音楽の流れと、時としてアクの強い思い切った表情付けがなかなか楽しい。ただ、オーケストラがやや鈍重。特に第2楽章以降に若干不満が残る。
L. Slovák/Czecho-Slovak Radio Symphony Orchestra
第1楽章: 19'28"
第2楽章: 7'15"
第3楽章: 7'31" 
第2、3楽章の心もとなさには耐えられない。特に第2楽章などはムラヴィーンスキイに比べるとはるかに遅いテンポであるにもかかわらず、指がもつれているのをはっきりと聴き取ることができる。スピード感がどうこういう前のレベル。
L. Stokowski/Philadelphia Orchestra
第1楽章: 18'55"
第2楽章: 6'36"
第3楽章: 7'39" 
第1楽章はゆったりとしたテンポでしっかりと歌い込まれた名演。ただ、2楽章以降のリズム感の悪さが残念。非常に楽譜に忠実で誠実な演奏である。なお、3楽章コーダではタンバリンが入っている(他にはムラヴィーンスキイも使用している)。
L. Stokowski/Chicago Symphony Orchestra
第1楽章: 17'14"
第2楽章: 6'29"
第3楽章: 7'37" 
オーケストラの高い機能を生かした、洗練された佳演。時々大胆な表情も散見されるものの、基本的には注意深くコントロールされたオーソドックスな演奏。
E. Svetlanov/USSR State Symphony Orchestra
第1楽章: 18'11"
第2楽章: 6'16"
第3楽章: 6'54" 
このコンビならではの大柄な響きが楽しめる。ただ、今一つ繊細さに欠けるために、特に第1楽章に物足りなさが残る。第2楽章以降の描き分けも通り一遍で、全体に単調なのが残念。
E. Tabakov/Bulgarian National Radio Symphony Orchestra
第1楽章: 17'48"
第2楽章: 5'35"
第3楽章: 6'53" 
オーケストラの技術面での野暮ったさも含め、昭和臭の強いショスタコーヴィチである。ソ連をリアルタイムで経験した世代には、郷愁に駆られるタイプの不器用な熱演であろう。
Y. Temirkanov/Leningrad Philharmonic Orchestra
時間不詳
地に足のついた、充実した秀演。細部まで丁寧に磨き込まれたオーケストラの名技と、それを堅実かつスケール大きくまとめあげるテミルカーノフの手腕が見事。ロシアの演奏家ならではのアクの強さを失うことなく、決して奇を衒うことのないスマートな音楽作りが光る。この作品の模範的な演奏と言えるだろう。
Y. Temirkanov/St. Petersburg Philharmonic Orchestra
第1楽章: 15'40"
第2楽章: 5'52"
第3楽章: 6'47" 
テミルカーノフの手堅さが窺える。オーケストラも無難にまとめており、現代風のロシアン・サウンドも楽しめる。流れの良い演奏だが、全てが当たり前のように過ぎて行くため、聴き終えた後に物足りなさが残る。
Y. Temirkanov/St. Petersburg Philharmonic Orchestra
第1楽章: 16'23"
第2楽章: 5'53"
第3楽章: 7'30" 
煌びやかで輝かしいオーケストラの音色の魅力が際立つ仕上がりである。しなやかで流麗なテミルカーノフの音楽を、気負うことなく余裕を持って再現した大人の演奏と言うことができるだろう。テミルカーノフが得意にしている作品だけに、燃焼度の高さが堂に入っていて素敵。こういう演奏で聴くと、これらの作品は既に“古典”だという感を強くする。ただ、ローカル色の薄まったオーケストラの響きや、軋みのない滑らかな音楽作りには一抹の寂しさや物足りなさを感じることもまた事実。
M. Wigglesworth/BBC National Orchestra of Wales
第1楽章: 17'30"
第2楽章: 6'02"
第3楽章: 6'50" 
第1楽章のゆったりとしたテンポが弛緩した感じしかもたらさないのは惜しいが、決して技術的に傑出しているわけではないオーケストラをきちんとまとめあげる手腕はなかなかのもの。作品の内容を深くえぐり出している部分はないが、流れは十分に自然で、清潔な爽快感が残る仕上がりになっている。

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Last Modified 2023.11.16

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