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交響曲第15番 イ長調 作品141

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指揮者オーケストラ録音年レーベル番号備考評価
ASHKENAZY, VladimirRoyal Philharmonic Orchestra1990Decca430 227-2
****
BARSHAI, RudolfWDR Sinfonieorchester1998Brilliant6324Brilliant-8128*****
BOREYKO, AndreyRadio-Sinfonieorchester Stuttgart des SWR2010hänsslerCD 93.284Live (24-25 June)*****
CAETANI, OlegOrchestra Sinfonica di Milano Giuseppe Verdi2005Arts47706-8SACD, Live(June)****
DUTOIT, CharlesOrchestre Symphonique de Montréal1992LondonPOCL-1433
*****
EGER, JosephLondon Philharmonic Orchestra1977CharismaCAS 1128LP, Excerpts.**
FEDOSEEV, VladimirMoscow Radio Symphony Orchestra1996CANYONPCCL-00351
****
GERGIEV, ValeryMariinsky Orchestra2008MariinskyMAR0502SACD****
HAITINK, BernardLondon Philharmonic Orchestra1979LondonPOCL-9255/66
*****
HORVAT, MilanAustrian Broadcast Symphony Orchestra1977Classical ExcellenceCE 11043LP****
INBAL, EliahuWiener Symphoniker1992DenonCOCO-78948
****
JANSONS, MarissLondon Philharmonic Orchestra1997EMI7243 5 56591 2 5
****
JÄRVI, NeemeGothenburg Symphony Orchestra1988DGF00G 20441
****
KATS, ArnoldNovosibirsk Philharmonic Orchestra1982MelodiyaC10-18841-2LP****
KEGEL, HerbertRundfunk-Sinfonieorchester Leipzig1972WeitblickSSS0040-2Live(7 Nov.)*****
KITAENKO, DmitriGürzenich-Orchester Köln2004Capriccio71 029SACD, Live(3-7 July)****
KOFMAN, RomanBeethoven Orchestra Bonn2005MDG937 1210-6SACD****
KONDRASHIN, KirilStaatskapelle Dresden1974ProfilPH06065Live(23 Jan.)****
KONDRASHIN, KirilMoscow Philharmonic Symphony Orchestra1974VictorVICC-40094/103Icone-ICN-9408-2, Melodiya-MEL CD 10 01065****
LÓPEZ-COBOS, JesúsCincinnati Symphony Orchestra2000TelarcCD-80572
****
MRAVINSKY, EvgenyLeningrad Philharmonic Orchestra1972MelodiyaM10-43653/4LP, Live, Mono, Victor-VIC-28053(LP)*****
MRAVINSKY, EvgenyLeningrad Philharmonic Orchestra1976VictorVICC-40118/23Live(26 May), Melodiya-MCD 008(3rd mov. only.)*****
ORMANDY, EugenePhiladelphia Orchestra1972BMG09026-63587-2RCA-CRL3-1284(LP)*****
PLETNEV, MikhailRussian National Orchestra2008PentaTonePTC 5186 331
****
POLYANSKY, ValéryRussian State Symphony Orchestra1996ChandosCHAN9550Regis-RRC 1181(Konstantin Ivanov)*****
ROSTROPOVICH, MstislavLondon Symphony Orchestra1989Teldec9031-74560-2
****
ROSTROPOVICH, MstislavLondon Symphony Orchestra1998AndanteSC-AN-4090Live(28 Oct.).****
ROZHDESTVENSKY, GennadyMoscow Radio Symphony Orchestra1972World Music ExpressWME-S-CDR 1024CD-R, Live(10 May).*****
ROZHDESTVENSKY, GennadyUSSR Ministry of Culture State Symphony Orchestra1983VictorVICC-40001/11BMG-74321 59057 2*****
SANDERLING, KurtBerliner Sinfonie-Orchester1978Deutsche Schallplatten25TC-288
*****
SANDERLING, KurtCleveland Orchestra1991EratoWPCS-5539
*****
SANDERLING, KurtBavarian Radio Symphony Orchestra
HallooHAL-33-34Live*****
SANDERLING, KurtBerlin Philharmonic Orchestra1999Berliner PhilharmonikerBPH 06 11Live(16 Mar.)*****
SANDERLING, KurtBerlin Philharmonic Orchestra1999‘Fachmann für Klassischer Musik’ SocietyFKM-CDR-60/1CD-R, Live(17 Mar.)*****
SEROV, EduardCzech Philharmonic Orchestra1979PragaPR 250 003Live(29 Nov.).****
SHOSTAKOVICH, MaximMoscow Radio Symphony Orchestra1972VictorSMK-7724LP, Victor-VIC-5352(LP), Melodiya-33 C 70-14549-58(LP, 4th mov. excerpts.)*****
SHOSTAKOVICH, MaximLondon Symphony Orchestra1990Collins12062
****
SHOSTAKOVICH, MaximPrague Symphony Orchestra2006SupraphonSU 3890-2Live(8-9 Mar.)****
SLOVÁK, LadislavCzecho-Slovak Radio Symphony Orchestra1989Naxos8.550624
****
SOLTI, GeorgChicago Symphony Orchestra1997Decca458 919-2
****
ENTREMONT, Philippe & MIKKOLA, Laura (Pf)2006CascavelleVEL 3102Arr. for two pianos by D. D. Shostakovich.****
【Viktor Derevianko (with Mark Petarsky)編】
演奏者録音年レーベル番号備考評価
KREMER, Gidon (Vn), HAGEN, Clemens (Vc), SAKHAROV, Vadim (Pf & Cel), SADLO, Peter, GUGGEIS, Edgar, GÄRTNER, Michael (Perc)1995DG449 966-2
****

V. Ashkenazy/Royal Philharmonic Orchestra
第1楽章: 8'00"
第2楽章: 13'33"
第3楽章: 4'11"
第4楽章: 14'18" 
オーケストラは十分に巧く、整然と音楽が進んでいく。しかしながら、この曲の持つ複雑な内容を、アシケナージが咀嚼しきっているとまでは言えない。全曲の大部分を占める弱奏部分での説得力のなさ、表現力のなさは、この演奏の印象を退屈なものにしている。外見ばかりが整えられて、中身が伴わない演奏の典型。
R. Barshai/WDR Sinfonieorchester
第1楽章: 8'19"
第2楽章: 11'43"
第3楽章: 3'53"
第4楽章: 13'58" 
引き締まったアンサンブル、地に足のついた作品解釈、バルシャーイの美質がよく出た好演。オーケストラの音色はロシアのものとは明らかに違うが、この曲においては全く不満にならず、むしろプラスに働いていると言えるだろう。奇を衒うことなく正攻法で取り組んだ、文字通り正統派の演奏である。
A. Boreyko/Radio-Sinfonieorchester Stuttgart des SWR
第1楽章: 7'52"
第2楽章: 15'02"
第3楽章: 4'09"
第4楽章: 17'09" 
ことさらに晩年の雰囲気などを強調することなく、純音楽的に成功した好演である。まず、リズムの処理が模範的で、音楽の流れに淀みが一切ない。その上で、思いっきり盛り上げてクライマックスを作るので、スマートな聴きやすさと生理的な興奮とが極めてバランスよく両立している。しかも、個々の楽想の描き分けも自然かつ適切であり、まさに現代のスタンダードと言ってよい出来である。あえて言えば、響きが健康的に過ぎるようにも思えるが、これはオーケストラの特質も多分に影響しているのであろう。
O. Caetani/Orchestra Sinfonica di Milano Giuseppe Verdi
第1楽章: 8'28"
第2楽章: 14'28"
第3楽章: 4'15"
第4楽章: 19'04" 
淡々と表面的に音楽が流れていく。音色の磨き上げも今一つで、カエターニの他の演奏と比べて不出来な部類に入るだろう。第1楽章冒頭のトライアングルのシケた音色は、ちょっと許し難い。
C. Dutoit/Orchestre Symphonique de Montréal
第1楽章: 7'45"
第2楽章: 15'54"
第3楽章: 4'19"
第4楽章: 15'25" 
あらゆる意味で模範的な美演。技術的な問題は全くなく、解釈も極めて正攻法。特に第1楽章のきらびやかな仕上がりは素晴らしい。この難しいスコアを無理なく音化している感じ。あまりに明晰な演奏だけに、謎めいた陰影に不足するようにも思えるが、そこは趣味の問題だろう。
J. Eger/London Philharmonic Orchestra
時間不詳
第1楽章と第4楽章のみ、それもどちらも大幅なカットを加えられたもの。20世紀の音楽を紹介するシリーズの1枚らしいが、このようなカットを加える意味が全く理解できない。せめて、どれか一つの楽章をきちんと取り上げるべきではなかろうか?演奏自体はごく平凡なもの。録音は、人工的な残響が気になる。
V. Fedoseev/Moscow Radio Symphony Orchestra
第1楽章: 8'19"
第2楽章: 13'32"
第3楽章: 4'32"
第4楽章: 14'39" 
オーケストラの高い技術に感心する。ソロの多いこの曲に関しては、このことが非常に有利に作用している。録音も素晴らしい。しかしながら、抒情性が前面に出てくるフェドセーエフの音楽は、この曲とは異質なもののように感じられる。曲の表面的な部分は十二分すぎる程に再現されているのだが、聴き手を縛り付けるような力には欠ける。
V. Gergiev/Mariinsky Orchestra
第1楽章: 8'18"
第2楽章: 14'59"
第3楽章: 4'04"
第4楽章: 16'36" 
しなやかに流れつつも彫りの深い表現力を持った、いかにもゲールギエフらしい快演である。妙な小細工を排した正攻法で推進力のある音楽作りが、作品の美質を十分に描き出している。ただし、オーケストラのどこか人工臭のする響きが、表現の迫真性をわずかながら削いでいるようにも感じられる。
B. Haitink/London Philharmonic Orchestra
第1楽章: 8'02"
第2楽章: 16'34"
第3楽章: 4'02"
第4楽章: 16'53" 
派手さはないが、単に堅実なだけに留まらない充実した名演。全ての音が意味深く響き、相互に緊密な関連付けがなされているために造形もしっかりとしている。非常に明快な解釈であるが、どこかくすんだようなオーケストラの音色がこの演奏にさらなる魅力を付加している。室内楽的なテクスチュアと交響曲的なスケールの大きさとが見事に調和しているのが素晴らしい。
M. Horvat/Austrian Broadcast Symphony Orchestra
第1楽章: 7'32"
第2楽章: 14'34"
第3楽章: 4'23"
第4楽章: 14'25" 
なかなかの好演。全曲を貫く緊張感が支えるクライマックスでの爆発力が、傑出している。さすがにソリスティックな部分ではオーケストラが苦戦しているものの、全体の雰囲気と大局的な音楽の流れがそうした瑕を補って余りある。
E. Inbal/Wiener Symphoniker
第1楽章: 7'59"
第2楽章: 15'08"
第3楽章: 4'21"
第4楽章: 15'36" 
極めて明解な分析的演奏。和声やリズムの構造、様々な引用のからくりなどが、森泰彦氏のライナー同様に分かりやすく示されている(ライナーと演奏との間に何の関係もないのだが)。全体の響きはすっきりとして明るく、晦渋さはない。聴きやすい仕上がりであることには違いないが、この作品が持つ独特の雰囲気とは異質のようにも感じられる。また、知的なアプローチの割には、聴き手に何かを考えさせるような部分もほとんどない。
M. Jansons/London Philharmonic Orchestra
第1楽章: 8'03"
第2楽章: 17'03"
第3楽章: 3'59"
第4楽章: 16'40" 
よく整えられた演奏で、雰囲気もよく出ている。しかし、どこか譜面の内側まで入りきれないようなもどかしさが残る。それらしい響きが出ているにもかかわらず、その音から戦慄を感じることもなく、また全体に背筋が凍るような緊張感にも乏しいので、外見ほどは満足できない。
N. Järvi/Gothenburg Symphony Orchestra
第1楽章: 7'54"
第2楽章: 15'19"
第3楽章: 4'38"
第4楽章: 15'04" 
雰囲気は良い。ただ、どこか垢抜けせず、冴えない印象が強い。オーケストラのアンサンブルも及第点には達しているものの、余裕を持ってこの曲を再現しているとは言い難い。スコアを見ればきちんと演奏されていることが分かるが、聴いた後に印象に残るものはほとんどない。
A. Kats/Novosibirsk Philharmonic Orchestra
第1楽章: 7'35"
第2楽章: 13'24"
第3楽章: 4'44"
第4楽章: 13'20" 
速めのテンポで引き締まった音楽づくりがなされているが、第4楽章の主部冒頭など少々あっさりし過ぎと感じる部分はあるものの、全体に作品の雰囲気をよく捉えたた、なかなかの佳演である。オーケストラは健闘しているものの、技術的には洗練されているとは言い難いのが惜しい。
H. Kegel/Rundfunk-Sinfonieorchester Leipzig
第1楽章: 7'35"
第2楽章: 16'34"
第3楽章: 3'42"
第4楽章: 17'21" 
なんという音楽なのだろう。音楽が進んで行くにつれて、得体の知れない怖さに身体の震えが止まらなくなる。悲鳴、慟哭、嗚咽…そんなありきたりの言葉では形容できない。作品の可能性を汲み尽したかのようなケーゲルの解釈は、まさに空前絶後。オーケストラの非力さが何とももどかしい。
D. Kitaenko/Gürzenich-Orchester Köln
第1楽章: 7'58"
第2楽章: 16'01"
第3楽章: 4'34"
第4楽章: 16'59" 
端正で美しい仕上がりに感心するが、これといった特徴に欠ける印象の薄い演奏。全体を貫く緊張感や弱奏部の表現力に不足するために、個々のモノローグが断片化してしまって作品全体の劇性が必ずしも適切に表出しきれていないことがその理由かもしれない。
R. Kofman/Beethoven Orchestra Bonn
第1楽章: 8'30"
第2楽章: 17'10"
第3楽章: 4'35"
第4楽章: 15'32" 
ごくオーソドックスな解釈である。それだけに、この作品が持つ古典的な佇まいや静謐な美しさだけではない、多様で奥深い諸相が表現しきれていないもどかしさを感じる。やや技術的に弱い個所もないわけではないが、丁寧に仕上げられているのでリファレンスにはなり得るだろう。
K. Kondrashin/Staatskapelle Dresden
第1楽章: 7'00"
第2楽章: 13'56"
第3楽章: 4'20"
第4楽章: 17'10" 
同年の録音ということもあり、テンポ設定などの基本的な解釈は、全集盤とほぼ同じ。引き締まった推進力はなかなかのものだが、コンドラーシンならではのアクの強いタメがあまり感じられないために、焦点が定まりきらずに音楽が流れていく傾向がある。ライヴゆえの些細な乱れはあるものの、集中度の高いSKDの演奏姿勢と、独特の凄みを感じさせる音色は特筆に価する。ただし、独奏楽器の水準は全集盤の方が高い。
K. Kondrashin/Moscow Philharmonic Symphony Orchestra
第1楽章: 7'05"
第2楽章: 13'57"
第3楽章: 4'13"
第4楽章: 15'15" 
かなり速めのテンポを持った推進力溢れる演奏。これは第1楽章で顕著だが、いささかせわしなく感じられるのは否めない。むしろ、このコンビ独特の荒っぽさがネガティヴに強調されてしまったように感じられる。第4楽章などでの圧倒的なクライマックスの作り方はさすがだが、全体的にはそれほど傑出した演奏とまではいえないだろう。
J. López-Cobos/Cincinnati Symphony Orchestra
第1楽章: 8'18"
第2楽章: 15'45"
第3楽章: 4'19"
第4楽章: 15'57" 
よく整えられた、とても聴きやすい演奏。しかし、あらゆる音が明るい響きを持って流麗に鳴らされているために、この作品が持つ切り詰められた美しさや深さを表出するには至っていない。
E. Mravinsky/Leningrad Philharmonic Orchestra
第1楽章: 7'52"
第2楽章: 14'45"
第3楽章: 4'10"
第4楽章: 15'28" 
レニングラード初演時のライヴ録音。すでにムラヴィーンスキイの解釈は確立されている。確信に満ちたテンポ、鋭い切り込みを見せるリズム。楽譜の隅々まで丁寧に読み込まれ、それが全て音化されていることには驚嘆するしかない。第1楽章が素晴らしい出来で、後年の録音よりも緊張感に満ちた名演に仕上がっている。第2楽章も、緊張の持続という点においてはこの録音の方が優れているが、音楽の練り上げ具合はやはり後年のものに劣る。第3楽章以降も立派な演奏ながら、まだ解釈が深化していない印象が拭えない。とはいえ、この曲の理想的な演奏の一つに挙げられることは間違いない。
E. Mravinsky/Leningrad Philharmonic Orchestra
第1楽章: 7'41"
第2楽章: 13'44"
第3楽章: 4'20"
第4楽章: 14'17" 
作曲家自身も大変満足していたという最初の録音に収録された演奏会から4年後、作曲家の死後1年近く経った後の再録音である。1楽章で打楽器のリズムがしっくり来なかったり、2楽章の最初の方にやや中途半端な印象が残ったりもするが、この至難な曲のライヴ録音としては驚異的な精度である。テンポ、強弱、リズム、フレージングのいずれを取っても完璧なまでに楽譜に忠実であり、ムラヴィーンスキイの読譜能力の非凡さが伺える。1、3楽章で見られるように、いつもながら無愛想な音楽ではあるが、早目のテンポの中で繰り広げられる細やかなニュアンスに満ちた演奏は他の誰にも真似できないものであり、またそれがショスタコーヴィチの音楽の特質そのものでもある。2楽章や3楽章の後半などでは、スコアの薄さを持て余したような部分も見られるが、4楽章は圧巻であり、この楽章に関しては余人の付け入る隙はないといえよう。ムラヴィーンスキイがこの曲をもっと取り上げて研究を進めていたならば間違いなく究極の演奏ができていたはずであるが、ほんのわずかしか演奏しなかったのは残念としかいいようがない。この曲はムラヴィーンスキイのお眼鏡にかなわなかったのか、それとも、ムラヴィーンスキイが手に余ると判断したのか…。
E. Ormandy/Philadelphia Orchestra
第1楽章: 8'27"
第2楽章: 15'19"
第3楽章: 4'11"
第4楽章: 15'38" 
オーマンディ/フィラデルフィアOのコンビといえば必ず「内容がない」と言われる。この録音についても「オーマンディは作曲者の心の葛藤とはまったく無関係な所でハッピーな音を鳴らしている」(柴田南雄:レコードつれづれぐさ, 音楽之友社.)のような批評があったようだが、どうしてどうして、これは素晴らしい演奏。真摯にスコアを音化することの威力をまざまざと見せつけてくれる。強奏部でも決して汚い音はせず、余裕を持ってクライマックスを築く一方で、絶対に音の痩せない弱奏部も聴き逃せない。全てがスマートかつ楽々と解決されているためギリギリの緊張感はなく、確かにそれが物足りないとも思うが、十分に立派な演奏である。
M. Pletnev/Russian National Orchestra
第1楽章: 8'14"
第2楽章: 16'40"
第3楽章: 4'19"
第4楽章: 17'29" 
いかにもプレトニョフらしい妙に人工臭のある無機質な肌触りでありながらも内面的な燃焼度が高い、幻想的な高揚感とでもいった独特の雰囲気が、この作品の佇まいと非常によく共鳴している。プレトニョフが紡ぎ出す淀みのない流れは、いかにもロシア的な幻想世界を描き出していて秀逸。
V. Polyansky/Russian State Symphony Orchestra
第1楽章: 7'50"
第2楽章: 16'45"
第3楽章: 4'07"
第4楽章: 17'11" 
名演である。冒頭のグロッケンシュピールから最後の和音まで、緊張感が全く途切れない。弱奏部の緊張感が強奏部をも支配するようなK. ザンデルリンクやムラヴィーンスキイの演奏とは逆に、暴力的なまでの強奏部の勢いが弱奏部も支配しているといった感じ。同じくモスクワのオーケストラを指揮したM. ショスタコーヴィチの演奏に通ずるものがあるが、全編から迸る戦慄はこのポリャンスキイ盤の方が上。切れ味の良いリズム感と、いかにもロシア音楽らしい異様に長いフレージングが、一切の小細工を排除したスコアに忠実な音楽作りを一層引き立たせている。作品の解釈を完全に聴き手に委ねるような演奏には潔さだけではなく、一種独特な凄みも感じられる。息もつかせぬ第1楽章が特に素晴らしいが、第4楽章の練習番号125以降、低音のオスティナートと共に音楽が悲愴に高揚していく部分の素晴らしさも特筆に価する。この作品が達成している特異な音楽世界を見事に描き出している名演は他にもあるが、尋常ならざる精神の強靭さを端的に表出しているという点でこの演奏は傑出している。
M. Rostropovich/London Symphony Orchestra
第1楽章: 8'13"
第2楽章: 16'17"
第3楽章: 4'07"
第4楽章: 15'56" 
非常にエネルギッシュな演奏。第2楽章や第4楽章のクライマックスは、ロストロポーヴィチ自身のチェロ演奏を思わせるような力強さと迫力に満ちている。ややクセのある歌い回しもあるが、基本的にはオーソドックスな解釈。ただ、リズム感が冴えないことと、弱奏部でどこか落ち着かない騒がしさのようなものを感じることが残念。
M. Rostropovich/London Symphony Orchestra
第1楽章: 8'21"
第2楽章: 16'33"
第3楽章: 4'16"
第4楽章: 18'23" 
全集録音に比べると、弱奏部の意味深さが段違い。ただ、ライヴ録音ゆえの瑕はともかく、磨き上げられたという印象はあまりないのが惜しい。
G. Rozhdestvensky/Moscow Radio Symphony Orchestra
第1楽章: 7'21"
第2楽章: 14'53"
第3楽章: 3'56"
第4楽章: 13'12" 
1972年5月10日の大阪公演の録音である。NHKが収録・放送したようなので、FMのエアチェック音源がマスターではないかと推測される。国外初演(東独初演との関係がはっきりはしていないが)の名に恥じない名演。全曲を通じてテンションが猛烈に高く、おもちゃ箱をひっくり返したかのように、多彩な楽想がとめどなく溢れ出てくるような演奏である。終楽章のクライマックスは、まさに忘我の境地。K. ザンデルリンクの深遠な音楽とは対極にあるが、ロジデーストヴェンスキイもまたこの曲の本質に迫っていることは疑う余地がないだろう。
G. Rozhdestvensky/USSR Ministry of Culture State Symphony Orchestra
第1楽章: 7'40"
第2楽章: 16'23"
第3楽章: 4'28"
第4楽章: 14'22" 
効果抜群の秀演。スコアに込められた響きの面白さが十分に引き出されている。オーケストラは少々荒いが、手堅くまとめられていて聴き苦しいことはない。もちろん謎めいた雰囲気も模範的に表出されている。ただ、若干静寂や闇に乏しいのが惜しい。
K. Sanderling/Berliner Sinfonie-Orchester
第1楽章: 8'26"
第2楽章: 15'13"
第3楽章: 5'10"
第4楽章: 19'43" 
隅から隅まで、余すところなく考え抜かれた秀演。ザンデルリンクの解釈は独特だが、完成された説得力を持っている。第1楽章や第3楽章では好き嫌いが分かれるかもしれないが、第2楽章と第4楽章に関しては完璧といって良い意味深さを有している。オーケストラの技術がやや弱いことと、強奏で音の割れる録音が残念だが、それを超えた素晴らしさがある。ザンデルリンクはこの曲の録音をいくつか残しているが、その原点ともいえる演奏。
K. Sanderling/Cleveland Orchestra
第1楽章: 8'48"
第2楽章: 16'19"
第3楽章: 5'11"
第4楽章: 20'21" 
とてつもなく巨大で深遠な名演。ゆったりとしたテンポだが弛緩を感じさせる部分は皆無で、全ての音と休符にぎっしりと意味がつまっている。特に弱奏部の表現力は驚異的で、これほどまでに切実に訴えかけてくる音楽は稀だろう。クライマックスに至るうねりも凄絶。クリーヴランド管の機能を十分に生かし、スコアに書かれていることが完璧に具現化されている。長大な終楽章など個性的な解釈であるにもかかわらず、それがショスタコーヴィチの音楽そのものだという圧倒的な説得力に満ちている。この演奏を聴かずにこの曲を語ることはできない。
K. Sanderling/Bavarian Radio Symphony Orchestra
第1楽章: 8'26"
第2楽章: 14'48"
第3楽章: 5'00"
第4楽章: 19'38" 
いつもながらの重く深い音楽に、ライヴらしい引き締まった緊張感の感じられる名演。技術的な精度も高く、ザンデルリンクの至芸を存分に味わうことができる。
K. Sanderling/Berlin Philharmonic Orchestra
第1楽章: 8'29"
第2楽章: 14'49"
第3楽章: 4'51"
第4楽章: 18'33" 
ザンデルリンクの懐の深い音楽と、ベルリンPOの貫禄の名技を堪能することができる。翌日の演奏と比較すると全体にテンポが若干ながら速く、ライヴならではの緊張感という点ではこちらの方が上のようにも感じられる。一方で、深遠な雰囲気という点では翌日の方がより優れている。いずれにしても、楽曲のあらゆる箇所を意味深く響かせつつも(たとえば第2楽章で第1交響曲の引用がチェレスタに出てくる瞬間など)、端正な形式感を厳然と保ちながら巨大な音楽を形成するザンデルリンクの手腕には脱帽。文句のつけようがない名演である。
K. Sanderling/Berlin Philharmonic Orchestra
第1楽章: 8'31"
第2楽章: 15'02"
第3楽章: 5'07"
第4楽章: 19'06" 
形容する言葉も見つからない程、ただただ圧倒される空前絶後の名演。ライヴゆえの瑕もないわけではないが、現在聴くことのできる録音の中では文句なしに最高のものであろう。ザンデルリンクの完成された解釈を、ベルリン・フィルがその底力を遺憾なく発揮して余すところなく音にしている。会場中に張り詰めた異様な緊張感まで伝わってくるようだ。海賊盤のわりには録音も良い。
E. Serov/Czech Philharmonic Orchestra
第1楽章: 8'15"
第2楽章: 15'25"
第3楽章: 4'10"
第4楽章: 16'25" 
オーケストラの音色が、チェコ・フィルであるようには聴こえないのが気になるが(例えば、クラリネットやホルンのヴィブラートの質)、演奏自体はよくまとまった手堅いもの。ただ、特に木管楽器の音程が悪く、響きが濁りがちなのが欠点。一応ライヴ録音と標記されているが、それにしては非常に安定した出来だといえるかもしれない(もちろん、小さなミスはいくつかあるが)。雰囲気はよく出ているのだが、今一つ洗練度が足りないようにも感じられる。
M. Shostakovich/Moscow Radio Symphony Orchestra
第1楽章: 7'47"
第2&3楽章: 19'45"
第4楽章: 14'30" 
作曲者自身の言葉「おもちゃの店」という雰囲気を、最も良く表出した演奏。大作曲家最晩年の作品として、深くて重い、厳しくて寂しい解釈が主流を占める中、初演者マクシームの演奏は輝かしいばかりの煌めきを持っている。深みに乏しいという聴き方もできるだろうが、むしろ聴き手にこびりついた先入観を取り払ってみると、作曲者が頭に描いていた音楽はこのようなものだったのではないかと思えてくる。モスクワ放送交響楽団の華やかな響きと、首席奏者達の名技がこの印象に大きく貢献していることは改めて言うまでもない。第1楽章や第3楽章の生きの良い音楽もさることながら、第2楽章や第4楽章のクライマックスで見せる、精神のとてつもない力強さが素晴らしい。CD化が待たれる。
M. Shostakovich/London Symphony Orchestra
第1楽章: 7'45"
第2楽章: 16'53"
第3楽章: 3'58"
第4楽章: 16'31" 
初演者であるマクシームによる再録音。確かに立派な演奏ではあるのだが、これといって聴かせるものがない。こういう複雑な内容を持った曲の場合、手堅くまとめるだけでは全然面白くない。
M. Shostakovich/Prague Symphony Orchestra
第1楽章: 7'56"
第2楽章: 14'33"
第3楽章: 4'20"
第4楽章: 16'27" 
細かいニュアンスは無視されているが、大局的な音楽作りは模範的で、堂に入ったもの。ここでは、完全にオーケストラが指揮者の足を引っ張っている。弱奏部の音の張りが弱くて緊張感が損なわれている他、アンサンブルにも相当の難がある。終楽章クライマックスのトランペットは、それまでの全てをぶち壊しにする酷さ。
L. Slovák/Czecho-Slovak Radio Symphony Orchestra
第1楽章: 8'22"
第2楽章: 15'42"
第3楽章: 4'02"
第4楽章: 16'02" 
丁寧な演奏ではあるが、全ての面において力不足の感は否めない。弱奏部の表現力、強奏部の圧倒的な音響の双方に不満が残るため、聴き終えた後の充実感はほとんどない。ただ破綻はなく、解釈自体もポイントのずれたものではないために、聴いて害になるようなことはない。
G. Solti/Chicago Symphony Orchestra
第1楽章: 8'00"
第2楽章: 13'55"
第3楽章: 3'50"
第4楽章: 14'23" 
悪くない。模範的な解釈であるし、オーケストラの技術も文句なし。ただ、この曲にはもっと様々な要素がつまっている。それにしては、表現があまりに一本調子に過ぎる。水準以上であることも確かなのだが。
P. Entremont & L. Mikkola (Pf)
第1楽章: 8'16"
第2楽章: 11'47"
第3楽章: 4'06"
第4楽章: 14'54" 
技術的な不満はなく、丁寧な音楽作りにも好感が持てる演奏である。しかし、第4番や第10番などとは異なり、線的な絡みが大部分を占めるこの作品に関しては、2台ピアノではむしろ楽曲の骨格が見え辛くなってしまう。また、打楽器をはじめとする独特の色彩感が欠落することも、この曲においては特にマイナスだろう。
G. Kremer (Vn), C. Hagen (Vc), V. Sakharov (Pf & Cel), P. Sadlo, E. Guggeis, M. Gärtner (Perc)
第1楽章: 8'43"
第2楽章: 13'11"
第3楽章: 4'09"
第4楽章: 15'49" 
ショスタコーヴィチ自身はこの編曲を歓迎してOp. 141bisという作品番号を与えたらしいが、出来自体には正直言ってあまり感心しない。オリジナルに新たな光を与えるようなものではない上に、物足りなさばかりが残る。演奏は、全般にソツなくまとめられているもののスル・ポンティチェロ奏法を多用するクレーメルの音色の選び方には若干疑問がある。個性的なアップ・ボウと“つぎ足し”ボウイングによる独特のフレージングも、ショスタコの節回しにとっては決して効果的とはいえないように感じられる。その他の演奏者は全員達者で、クレーメルのスタイルによく従っているが、それだけ。これが「クレメラータ・ムジカ」たる所以なのか。結局のところ資料的な価値しか認められず、ショスタコ・マニアかクレーメル・ファン以外には全くお薦めできない。

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Last Modified 2017.02.28

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