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交響曲第11番 ト短調「1905年」 作品103

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指揮者オーケストラ録音年レーベル番号備考評価
ASHKENAZY, VladimirSt Petersburg Philharmonic Orchestra1994Decca448 179-2
BARSHAI, RudolfWDR Sinfonieorchester1999Brilliant6324Brilliant-8128
BERGLUND, PaavoBournemouth Symphony Orchestra1978EMI7243 5 73839 2 9EMI-CDS 7 47790 8
BYCHKOV, SemyonBerliner Philharmoniker1987Philips420 935-2
BYCHKOV, SemyonWDR Sinfonieorchester Köln2001AvieAV 2062SACD
CAETANI, OlegOrchestra Sinfonica di Milano Giuseppe Verdi2003Arts47676-8SACD, Live(Mar.)
CAETANI, OlegMelbourne Symphony Orchestra2005ABC Classics476 8364Live(Aug.)
CLUYTENS, AndréOrchestre National de la Radiodiffusion Française1958TestamentSBT 1099
DEPREIST, JamesHelsinki Philharmonic Orchestra1988DelosDE 3080
DEPREIST, JamesOregon Symphony2003DelosDE 3329Live(18-20 Jan.)
GAUK, AlexanderMoscow Radio Symphony Orchestra1958Brilliant8866Live(21 Dec.)
GERGIEV, ValeryRotterdam Philharmonic Orchestra1990Rotterdam Philharmonic OrchestraRPHO 2008-1Live(17 Nov.)
GERGIEV, ValeryPMF Orchestra2004Art Support SeriesCCD-34Live(30 July)
GERGIEV, ValeryMariinsky Orchestra2009MariinskyMAR0507SACD
HAITINK, BernardConcertgebouw Orchestra, Amsterdam1983LondonPOCL-9255/66
INBAL, EliahuWiener Symphoniker1992DenonCOCO-78920
INBAL, EliahuSWR Symphonieorchester2018SWR ClassicSWR19106CDLive(8-12 Nov.)
INOUE, MichiyoshiNagoya Philharmonic Orchestra2007Octavia RecordsOVCL00777Live(5 Dec.)
JANSONS, MarissPhiladelphia Orchestra1996EMI7243 5 55601 2 4
JÄRVI, NeemeGothenburg Symphony Orchestra1989DG429 405-2
JORDANIA, VakhtangRoyal Philharmonic Orchestra1999Angelok1ANG-CD-9903
JUROWSKI, VladimirLondon Philharmonic Orchestra2019London Philharmonic OrchestraLPO-0118Live(11 Dec.)
KEGEL, HerbertRundfunk-Sinfonieorchester Leipzig1958WeitblickSSS0040-2Live(24 Apr.)
KITAENKO, DmitriGürzenich-Orchester Köln2004Capriccio71 029SACD, Live(12-17 Feb.)
KITAHARA, YukioNHK Symphony Orchestra1992EMITOCZ-9201Live(25 & 26 Mar.).
KOFMAN, RomanBeethoven Orchestra Bonn2006MDG937 1209-6SACD
KONDRASHIN, KirilMoscow Philharmonic Symphony Orchestra1973VictorVICC-40094/103Melodiya-MEL CD 10 01065
KONWITSCHNY, FranzStaatskapelle Dresden1960Berlin Classics0090422BC
KREIZBERG, YakovOrchestre Philharmonique de Monte-Carlo2010OPMC005Live(25-26 Jan.)
LAZAREV, AlexanderRoyal Scottish National Orchestra2004LINNCKD 247SACD
MILANOV, RossenBulgarian National Radio Symphony Orchestra2006Bulgarian National Radio8 86470 67589 0Live.
MONTGOMERY, DavidJena Philharmonic Orchestra1996Arte Nova74321 54452 2
MRAVINSKY, EvgenyLeningrad Philharmonic Orchestra1957Russian DiscRDCD 11157Live(3 Nov.)
MRAVINSKY, EvgenyLeningrad Philharmonic Orchestra1959VictorVICC-40118/23Revelation-RV 10091, Praga PR 254018, BMG-Melodiya-BVCX-4025
NELSONS, AndrisBoston Symphony Orchestra2017DG483 5220Live(Sept.-Oct.)
PETRENKO, VasilyRoyal Liverpool Philharmonic Orchestra2008Naxos8.572082
PLETNEV, MikhailRussian National Orchestra2005PentaTone ClassicsPTC 5186 076SACD, Live(14 Feb.)
POLYANSKY, ValéryRussian State Symphony Orchestra1995ChandosCHAN9476
PRITCHARD, JohnBBC Symphony Orchestra1985BBC15656 91422Live(12 Apr.)
RAKHLIN, NatanUSSR State Symphony Orchestra1958MKD 04234-7LP
ROSTROPOVICH, MstislavNational Symphony Orchestra1992TeldecWPCC-5344
ROSTROPOVICH, MstislavLondon Symphony Orchestra2002LSOLSO0030Live(21-22 Mar.)
ROZHDESTVENSKY, GennadyUSSR Ministry of Culture State Symphony Orchestra1983VictorVICC-40001/11BMG-74321 63461 2
ROZHDESTVENSKY, GennadyBBC Philharmonic1997icaICAC 5169Live(4 Oct.)
SCHWARZ, GerardSeattle Symphony1995Koch374-142
SHOSTAKOVICH, MaximPrague Symphony Orchestra2006SupraphonSU 3890-2Live(28 Feb. and 1 Mar.)
SLOVÁK, LadislavCzech-Slovak Radio Symphony Orchestra1988Naxos8.550629
STOKOWSKI, LeopoldHouston Symphony Orchestra1958EMICDM 7243 5 65206 2 2Melodiya-C10-19543 001(LP)
STOKOWSKI, LeopoldMoscow Radio Symphony Orchestra1958Russian DiscRD CD 15 100Live(7 June), Memories-MR2541/2544
TABAKOV, EmilBulgarian National Radio Symphony Orchestra2013Gega NewGD 383
WIGGLESWORTH, MarkNetherlands Radio Philharmonic Orchestra2006BISBIS-SACD-1583SACD

V. Ashkenazy/St Petersburg Philharmonic Orchestra
第1楽章: 14'34"
第2楽章: 17'44"
第3楽章: 9'41"
第4楽章: 13'24" 
曲の悲劇性を前面に押し出した解釈だが、ダイナミックレンジの広い録音のせいもあってか、弱音部に力がないために煮えきらない演奏に仕上がっている。強奏を押えるというのは一つの見識だろうが、それに代わる別の魅力が感じられないのは致命的。技術的には無難な出来なので、聴いて不愉快になるようなことはない。
R. Barshai/WDR Sinfonieorchester
第1楽章: 15'27"
第2楽章: 18'44"
第3楽章: 11'28"
第4楽章: 14'17" 
引き締まった整然たる音楽の流れが、いかにもバルシャーイらしい。絶叫型の演奏ではないだけに作品本来の響きが自然に引き出されているものの、やはり終楽章などでは物足りなさを感じなくもない。
P. Berglund/Bournemouth Symphony Orchestra
第1楽章: 18'05"
第2楽章: 20'02"
第3楽章: 13'19"
第4楽章: 15'08" 
これは素晴らしい。標題音楽的な迫力に欠けることなく、交響曲としての魅力を完璧に表出している。堅実かつ適切なテンポ設定で、オーケストラが全く無理なく鳴りきっている。すみずみまで磨き上げられたアンサンブル、気品がありながらも心のこもった歌い回し、いずれをとっても全く不満がない。この曲の良さが分からない聴き手には、まず最初に聴いてもらいたい演奏。
S. Bychkov/Berliner Philharmoniker
第1楽章: 15'23"
第2楽章: 18'21"
第3楽章: 12'19"
第4楽章: 13'52" 
オーケストラの機能を十分に生かした(第2楽章の虐殺の場面ではチューバが飛び出しているが)、整然とした演奏。音響という点では立派な仕上がり。ただ、響きの壮麗さを超えて訴えかけてくるものはほとんどない。この曲に思い入れのある聴き手にとっては不満が残るだろう。
S. Bychkov/WDR Sinfonieorchester Köln
第1楽章: 14'29"
第2楽章: 18'31"
第3楽章: 12'11"
第4楽章: 13'58" 
丁寧な音楽作りがなされている。描写的なあざとさが前面に押し出されることはなく、徹底して交響曲らしい構成に終始した感が強い。聴きやすさに関しては随一だが、この曲に関する限り、物足りなさは否めない。
O. Caetani/Orchestra Sinfonica di Milano Giuseppe Verdi
第1楽章: 15'18"
第2楽章: 19'46"
第3楽章: 15'19"
第4楽章: 15'22" 
明るめの音色でしなやかに流れていく音楽は、いかにもカエターニらしい作り。第11番というとどうしても重量級の響きを求めてしまうが、こういう方向性も決して悪くはない。ただ、音楽の求心力はそれほどでもなく、この長大な作品を一息で聴かせるには少々散漫なのが残念。特筆すべきは、最後の鐘。まるで教会で録音してきたものをかぶせたかのような異質な響きには好悪がはっきりと分かれるだろうが、興味深いことだけは間違いない。個人的には、交響曲である以上、コーダだけを突出して強調することで全体のバランスが崩れるような解釈は、その意図が明確かつ妥当なものだとしても、あまり好きではない。
O. Caetani/Melbourne Symphony Orchestra
第1楽章: 15'48"
第2楽章: 20'06"
第3楽章: 13'40"
第4楽章: 15'31" 
明るめの音色でしなやかに流れていく音楽作りは、旧盤と同様。音楽の集中力および燃焼度はこちらの方が上だろう。ただ、旧盤で異彩を放っていた鐘の音色は、ここではごく普通のものになっている。カエターニ自身に鐘に対するこだわりがあるのかどうか、よくわからない。
A. Cluytens/Orchestre National de la Radiodiffusion Française
第1楽章: 15'32"
第2楽章: 17'53"
第3楽章: 13'59"
第4楽章: 12'25" 
ショスタコーヴィチ自身の立ち会いの元に行なわれた録音。テンポや解釈は模範的なもの。丁寧な足取りで素直にスコアが音化されているのが大変好ましい。ただ、ロシア風のアクの強さとは無縁のオーケストラには若干不満が残る。緩徐楽章は十分に美しく楽しめるのだが、第2、4楽章ではさすがに物足りなさを感じてしまう。この辺は好みの問題だろうが、今となっては録音も古く、敢えてこの盤を一番最初に聴く必要はない。最後の鐘は良い音色ではあるが、ずれまくり。
J. DePreist/Helsinki Philharmonic Orchestra
第1楽章: 17'44"
第2楽章: 21'25"
第3楽章: 13'39"
第4楽章: 15'29" 
標題音楽としての側面を押し出さずに、徹底して交響曲として仕上げた秀演。ゆったりとしたテンポで、決して刺激的な音響に溺れることなく、丁寧にスケール大きな音楽を奏でている。オーケストラの響きはいかなる箇所でも澄んでおり、力任せになることがない。猛烈な演奏を嗜好する向きには物足りないだろうが、実に格調の高い立派な演奏である。
J. DePreist/Oregon Symphony
第1楽章: 13'19"
第2楽章: 19'31"
第3楽章: 11'32"
第4楽章: 15'50" 
15年前の旧盤と異なり、本盤はライヴ録音。演奏時間も終楽章以外は非常に早くなっていることと併せて想像される熱気あふれる演奏…ではない。むしろ全く正反対の理知的で細部まで磨きあげた演奏。好き嫌いは分かれるだろうが、筆者には少々物足りなかった。もちろん、優れた演奏であることは認めるのだが。
A. Gauk/Moscow Radio Symphony Orchestra
第1楽章: 14'23"
第2楽章: 17'27"
第3楽章: 12'01"
第4楽章: 14'01" 
随所でテンポや音量は煽られているのだが、肝心の音楽がそれほど盛り上がり切らない。オーケストラが技術的に粗いのはこのコンビの常だが、ここでは音楽の詰めも粗い印象である。魅力的な箇所は決して少なくはないものの、全体としては楽想がただ漫然とまとまりなく流れていく感じ。
V. Gergiev/Rotterdam Philharmonic Orchestra
第1楽章: 16'39"
第2楽章: 19'09"
第3楽章: 12'18"
第4楽章: 13'56" 
若きゲールギエフの魅力が余すところなく物凄い熱量で発揮された快演。クライマックスに向けて集中度を弛緩することなく高めつつ、クライマックスの次のクライマックスへと無尽蔵なエネルギーを放出すると同時に内に蓄え、そして聴き手の想像を超える頂点に達する……この一連の流れを、終始洗練された流麗さを持って鮮やかに処理する。理屈ではなく、生理的に引き込まれる音楽だ。第1楽章のような弱奏部での表情にいま少しの彫りの深さを求めたいところではあるが、楽曲の長大さを全く感じさせない構成力と持続する緊張感は見事としか言い様がない。
V. Gergiev/PMF Orchestra
第1楽章: 14'06"
第2楽章: 17'34"
第3楽章: 10'53"
第4楽章: 14'07" 
オーケストラの響きは若々しくも細身で無機質だが、ゲールギエフ独特の流麗ながらもツボをはずさない音楽の劇的な構成はスケールが大きい。悲痛な叫びや軋みといった要素も、響きとしては物足りない部分があるものの、音楽の流麗さと見事に両立しているところが立派。
V. Gergiev/Mariinsky Orchestra
第1楽章: 15'11"
第2楽章: 17'17"
第3楽章: 10'29"
第4楽章: 13'43" 
淀みのない流麗な音楽作りで長大な作品を退屈することなく一気呵成に聴かせてしまう構成力は傑出しているものの、たとえば第1楽章のようにどこか集中力を欠いた散漫さが感じられる箇所が少なくない。オーケストラの肌理も粗い。
B. Haitink/Concertgebouw Orchestra, Amsterdam
第1楽章: 15'52"
第2楽章: 19'53"
第3楽章: 11'24"
第4楽章: 14'15" 
非常に誠実な演奏。オーケストラは最高水準の技術とまでは言い難いが、実に丁寧かつ清潔に演奏に取り組んでいるのが気持ち良い。標題音楽としての側面ばかりが強調されがちな曲だが、ハイティンクの純器楽曲的なアプローチはムラヴィーンスキイにも通ずるところがあり、曲の真価を適切に伝えている。それでいて興奮にも不足しないところが素晴らしい。ただ、個人的にはあと一歩の透徹感を望みたいところ。
E. Inbal/Wiener Symphoniker
第1楽章: 15'03"
第2楽章: 18'56"
第3楽章: 13'22"
第4楽章: 14'45" 
丁寧に仕上げられいて、スコアを見ながら聴くと改めてショスタコーヴィチのスコアの素晴らしさを認識することができるのだが、演奏そのものは非常に退屈。曲に魅力を感じることはできない。
E. Inbal/SWR Symphonieorchester
第1楽章: 13'32"
第2楽章: 18'09"
第3楽章: 11'08"
第4楽章: 15'26" 
過剰に激することも張り詰めることもない冷静で中庸な音楽の運びながらも、音程の良さ故の透明感のある響きが「スコアが透けて見える」ような見通しの良さをもたらしている。こういう純音楽的な解釈はいかにも現代的ではあるのだが、本質的に外連味を有するこの作品に関しては退屈な瞬間が少なからず発生してしまう。最後の鐘に対して私はさほど思い入れはないが、それでも全体に埋没する、まるでトライアングルのような鐘の扱いには疑問が残る。
井上道義/名古屋フィルハーモニー交響楽団
第1楽章: 14'37"
第2楽章: 17'41"
第3楽章: 12'15"
第4楽章: 14'08" 
標題音楽でありながらも古典的な造形の堅牢さが際立つ、格調の高い演奏。これ見よがしな演出よりもストレートな音楽の流れが優先されているので、この作品が苦手な聴き手にこそ一聴を勧めたい。
M. Jansons/Philadelphia Orchestra
第1楽章: 16'08"
第2楽章: 19'39"
第3楽章: 11'39"
第4楽章: 16'11" 
技術的には非常に水準の高い演奏。よく整理された美しい音をオーケストラから引き出している。だが、それだけ。戦争映画のサントラみたい。
N. Järvi/Gothenburg Symphony Orchestra
第1楽章: 13'48"
第2楽章: 17'02"
第3楽章: 10'29"
第4楽章: 13'30" 
早目のテンポで、非常に引き締まった演奏に仕上げている。オーケストラは管楽器が今一つ冴えないために、地味でくすんだ響きなのが残念ではあるが、健闘している。過剰な思い入れや描写性を排した、推進力に溢れる硬派な音楽はなかなか立派なもの。かなりそっけない表情なので、物足りなさを感じる聴き手も多いかもしれない。
V. Jordania/Royal Philharmonic Orchestra
第1楽章: 15'27"
第2楽章: 17'45"
第3楽章: 9'26"
第4楽章: 14'33" 
良くも悪くもよく整った演奏。力任せの爆演が多いこの作品においては、こういう純音楽的なアプローチも新鮮味がある。とはいえ、作品が本来持つアクの強さはすっかり薄められており、聴き手の趣味によってその部分をどう評価するかが分かれるところだろう。
V. Jurowski/London Philharmonic Orchestra
第1楽章: 13'33"
第2楽章: 17'34"
第3楽章: 12'28"
第4楽章: 14'58" 
歴史的な感傷を一切排除したかのような明晰さの一方で、発散される熱量の大きさゆえに無機質な音楽に陥っていない、現代的な秀演である。冗長さを一切感じさせない第1楽章から最後の熱狂的な鐘の乱打に至るまで、劇的でありながらも客観的な冷静さを兼ね合わせていることに感心させられる。
H. Kegel/Rundfunk-Sinfonieorchester Leipzig
第1楽章: 16'55"
第2楽章: 18'20"
第3楽章: 14'01"
第4楽章: 14'42" 
この作品を文句なしに傑作だと感じさせてくれる数少ない演奏の一つ。解釈に関しては完璧と言ってもよいだろう。オーケストラの弱さも、不思議と気にはならない。ただ、鐘の音に尋常ならざるこだわりを見せるケーゲルだけに、終楽章コーダの鐘の音は果たして録音がきちんと捉えているのか疑問が残る。
D. Kitaenko/Gürzenich-Orchester Köln
第1楽章: 16'57"
第2楽章: 19'51"
第3楽章: 13'27"
第4楽章: 15'02" 
落ち着いたテンポ設定が単なる鈍重さに陥ることなく、スコアの行間に込められた想いを丹念に紐解いているような印象を与える。全曲を通して緊張感が持続し、過度に描写的になることを避けた節度ある音楽作りが素晴らしい。もちろん、第2楽章などでの音のエネルギーにも不足することはなく、非常にバランスのとれた名演である。
北原幸男/NHK交響楽団
第1楽章: 17'13"
第2楽章: 20'25"
第3楽章: 13'43"
第4楽章: 15'24" 
端正な仕上がりではあるが、今一つ熱気が感じられないのが残念。オーケストラも堅実な演奏ぶりだが、音に力がなく、物足りなさが残る。
R. Kofman/Beethoven Orchestra Bonn
第1楽章: 17'16"
第2楽章: 20'29"
第3楽章: 11'04"
第4楽章: 15'36" 
端正な美感を終始保ち続ける、いかにもこのコンビらしい演奏である。それゆえに、この作品が本質的に持つ描写音楽的な“はったり”とは無縁で、通常は気にすることのない響きの美しさや抒情的な情感を意識させてくれる一方で、一抹の物足りなさを感じることも否めない。これをどう評価するかは、多分に聴き手の好みに依るだろう。ただ、最終音の鐘の処理には大いに疑問が残る。文学的な意味解釈は理解できなくもないが、これはあくまでも音楽作品である。ある一音の、それも特定の成分のみを極度に肥大させて取り扱うことには、どうしても賛同しかねる。
K. Kondrashin/Moscow Philharmonic Symphony Orchestra
第1楽章: 12'31"
第2楽章: 17'30"
第3楽章: 10'30"
第4楽章: 13'24" 
いつもながらの力感に満ちた演奏で悪くない。やや早目のテンポで颯爽かつグイグイと押していくスタイルには、素直に昂揚させられる。特に第4楽章の仕上がりが立派。ただ、このコンビの他の演奏に比べると、全体にスマートにまとまり過ぎのようにも感じられる。
F. Konwitschny/Staatskapelle Dresden
第1楽章: 16'20"
第2楽章: 18'40"
第3楽章: 14'04"
第4楽章: 15'08" 
これほどまでに聴き手に恐怖を感じさせる演奏は他にない。全ての楽器の音色が、心に突き刺さってくる。引き締まったテンポの中で、どこかぎこちないフレージングが異様に意味深い。技術的な完璧さや録音の優秀さとは無縁だが、極めて個性的で、しかし曲の本質をしっかりと掴んだ名演。この演奏を聴いて、この曲を“革命讚美”などと受け取る人はまずいないだろう。
Y. Kreizberg/Orchestre Philharmonique de Monte-Carlo
第1楽章: 14'21"
第2楽章: 18'14"
第3楽章: 12'26"
第4楽章: 15'23" 
2011年に51歳の若さで逝去されたクライツベルク本人が会心の出来、と語ったと伝えられるこの演奏は、スマートな音楽の流れと過不足のない盛り上がりが確かに素晴らしい。標題に伴う思い入れの類をことさらに強調することのない、それでいて十分に熱い演奏である。オーケストラがもう少し強力であれば、申し分のない名演となっていたかもしれない。
A. Lazarev/Royal Scottish National Orchestra
第1楽章: 16'58"
第2楽章: 19'43"
第3楽章: 8'50"
第4楽章: 15'50" 
作品の隅々まで把握しきったラザレフの解釈が、極めて説得力に満ちている。一つ一つの響きを噛み締めるような両端楽章と幾分あっさりとした中間楽章の対比は、この交響曲の音楽的な魅力と完成度を再認識させるに十分足るものである。オーケストラも独特の華やかなキツさを持った音色の魅力と高い精度で、地味ながらもじっくりと味わい深く歌い込む彼の特質を最良の形で音化している。
R. Milanov/Bulgarian National Radio Symphony Orchestra
第1楽章: 14'57"
第2楽章: 19'25"
第3楽章: 12'50"
第4楽章: 14'46" 
手堅い演奏。元々わかりやすい作品ではあるが、印象的な部分だけをクローズアップするのではなく、ソナタ形式の構成を感じさせるまとまりの良さが好ましい。一方で、強奏部の盛り上がりの割に全体にこじんまりとした印象を受けるのは惜しい。なお、本盤は第2楽章の一部と第4楽章のほぼ全部に鑑賞に支障があるレベルのノイズが入っている。ヒストリカル録音などを通してノイズに耐性がある聴き手以外には、お薦めできない。
D. Montgomery/Jena Philharmonic Orchestra
第1楽章: 17'33"
第2楽章: 21'49"
第3楽章: 15'50"
第4楽章: 14'50" 
実に伸びやかな歌に満ちた、爽やかな演奏。オーケストラに無理をさせることなく、素直に音楽を引き出している。この作品に付きまといがちな嫌味が払拭されており、大変聴きやすい仕上がりになっている。
E. Mravinsky/Leningrad Philharmonic Orchestra
第1楽章: 14'47"
第2楽章: 16'49"
第3楽章: 11'29"
第4楽章: 13'17" 
レニングラード初演のライヴ録音。録音状態はあまり良くないが、歴史的価値は非常に大きい。ムラヴィーンスキイの別の録音に比べて3楽章以外のテンポが非常に早く、狂気に満ちた音楽となっている。特に4楽章の狂暴さは異常。ムラヴィーンスキイは、このスコアの中に何を見い出していたのだろうか?
E. Mravinsky/Leningrad Philharmonic Orchestra
第1楽章: 15'25"
第2楽章: 18'20"
第3楽章: 11'26"
第4楽章: 14'26" 
初演ライヴの異常な昂奮は影を潜め、極めて風格のある格調高い演奏。全てが磨きあげられ、考え抜かれた緻密な設計の元に積み上げられた感がある。録音の鮮度は悪いが、この曲の理想的な再現だといえよう。
A. Nelsons/Boston Symphony Orchestra
第1楽章: 17'15"
第2楽章: 18'46"
第3楽章: 12'28"
第4楽章: 14'10" 
極上の響きで、技術上の欠点は皆無。ロシア色が払拭されて洗練された音楽になっており、楽曲構成の緊密さが際立つ。全体に落ち着いたテンポが採られているせいもあってか、血湧き肉躍る感覚には乏しい。第2楽章だけはテンポがかなり速いが、その印象に変わりはない。第4楽章冒頭のテンポ設定は、その意図が分からない。
V. Petrenko/Royal Liverpool Philharmonic Orchestra
第1楽章: 13'46"
第2楽章: 18'18"
第3楽章: 11'10"
第4楽章: 14'24" 
壮麗な佇まいと丁寧な仕上げに好感が持てる演奏である。第1楽章は少々彫りが浅いものの、第2楽章や第3楽章の盛り上げは模範的かつ相応の魅力を持っている。ただし、第4楽章は中途半端な出来であるのが惜しい。「単なる革命賛美の交響曲ではない」というお題目に捕らわれ過ぎたのだろう、楽曲が本来持っている暴力的な推進力が必要以上に削がれてしまい、音楽作品としての魅力や説得力が損なわれている。残響が非常に強調された最後の鐘の意図はよくわかるが、録音でしか実現できないようなことをやるのには、疑問が残る。
M. Pletnev/Russian National Orchestra
第1楽章: 16'46"
第2楽章: 18'46"
第3楽章: 11'35"
第4楽章: 14'57" 
整然としていながらも高揚感に満ちた、なかなかの佳演。優れた録音も影響しているのだろうが、輝かしく力強い響きがとても美しい。ライヴ録音ゆえにノーミスではないが、鑑賞に難を感じるような大きな瑕はない。ただ、緊張感に多少ムラがあり、幾分冗長さを感じる箇所があるのは惜しい。
V. Polyansky/Russian State Symphony Orchestra
第1楽章: 18'59"
第2楽章: 22'12"
第3楽章: 16'19"
第4楽章: 15'57" 
アクの強い、強烈なロシアン・サウンドを堪能できる。録音も良く、アンサンブルも非常に安定したもの。ただ、極めて粘着質で重い解釈は好き嫌いの分かれるところだろう。僕は、正直言ってあまり馴染めない。胃がもたれそう。ただ、こういう演奏でこの作品の持つメッセージを強く感じる聴き手がいるだろうことも理解はできる。
J. Pritchard/BBC Symphony Orchestra
第1楽章: 15'56"
第2楽章: 18'48"
第3楽章: 13'19"
第4楽章: 14'28" 
ライヴながら、丁寧に仕上げられた好演。オーケストラも十分に健闘している。しっかりとした高揚感を持ちながらも、どこか節度を保った感じが結果として嫌味が少なく聴きやすい演奏につながったともいえるだろう。背筋の凍るような戦慄や胃の痛くなるような緊張感とは無縁だが、効果抜群の音絵巻として結構楽しめる。
N. Rakhlin/USSR State Symphony Orchestra
時間不詳
初演者による録音。衒いのない、実に誠実な音楽づくりに感心させられる。厳しさやスケールの大きさがムラヴィーンスキイに劣るのは致し方のないところだが、どこか余裕のあるおっとりとした(良い意味での)田舎臭さに独特の魅力がある。録音の劣悪さは残念であるが、それでも安っぽくてアクの強いロシアの響きは十分に堪能できる。
M. Rostropovich/National Symphony Orchestra
第1楽章: 16'34"
第2楽章: 21'41"
第3楽章: 14'36"
第4楽章: 16'05" 
やや粘着質の重厚な秀演。全ての音に質量が感じられるような演奏で、特に第2楽章の虐殺の部分の遅さは聴き手によって好みが分かれるだろう。このコンビにありがちな荒っぽさはあまりなく、丁寧な仕上げといってもよい。第1楽章などの弱奏部における表現力には若干の不満を感じなくもないが、強い意欲に貫かれた巨大な音楽はなかなか魅力的。最後の鐘はわざわざ特注したものらしく、異例なまでに長い残響は、ロストロポーヴィチのこの曲に対する独特の思い入れを窺わせる。
M. Rostropovich/London Symphony Orchestra
第1楽章: 20'10"
第2楽章: 21'27"
第3楽章: 13'27"
第4楽章: 17'20" 
同じ指揮者によるスタジオ録音とほとんど同内容。ライヴゆえの瑕がないわけではないが、オーケストラの基本的な技術の差のために、響きとしてはこちらの方が充実している。最後の鐘も同じく異様に長いが、客席のノイズ等がほとんど感じられないので、リハーサル時のテイクをつないでいるのかもしれない。いずれにしても、この点に関してはライヴ盤である意義が見出せない。
G. Rozhdestvensky/USSR Ministry of Culture State Symphony Orchestra
第1楽章: 17'58"
第2楽章: 22'26"
第3楽章: 9'59"
第4楽章: 14'46" 
第2楽章の中間部は極端に遅いテンポだが、それ以外はむしろ早目の引き締まったテンポ。それでいて全体に重厚な仕上がりで、芝居がかったこの曲の内容を余すところなく引き出した名演。過度に悲劇的にも英雄的にもならず、ひたすら音響を積み上げていく解釈はこの曲にふさわしい。時としてかなり荒っぽい演奏をするコンビだが、ここではかなり精密なアンサンブルを見せている。もちろん、金管楽器や打楽器のアクの強い響きは健在。
G. Rozhdestvensky/BBC Philharmonic
第1楽章: 17'03"
第2楽章: 22'10"
第3楽章: 9'00"
第4楽章: 15'36" 
あらゆる表情やテンポ設定に決定的な説得力があり、ショスタコーヴィチのロシア的な要素を剥き出しにするような迫力がある。標題音楽的な表現には不足しないものの、徒に芝居がかることはなく、それでいてクライマックスの無尽蔵な迫力に終始圧倒される。ロシア的な鈍重さで最後の鐘の乱打まで揺らぐことなく剛毅に突き進む音楽がもたらす昂奮に、この作品の真価を見出す思いがする。オーケストラの技術水準に不満が残ることだけが惜しい。
G. Schwarz/Seattle Symphony
第1楽章: 20'38"
第2楽章: 19'13"
第3楽章: 14'33"
第4楽章: 14'37" 
整然とまとまった演奏。しかし、音楽的な内容と演奏技術の双方が共に今一つ。結果として、聴くに耐えない演奏では全くないものの、さしたる魅力も感じられない仕上がりとなっている。
M. Shostakovich/Prague Symphony Orchestra
第1楽章: 14'21"
第2楽章: 18'49"
第3楽章: 12'05"
第4楽章: 14'53" 
音楽は、作品の魅力をしっかりと捉えた立派なもの。しかし、オーケストラが非力すぎて随所で破綻しているのが残念。
L. Slovák/Czech-Slovak Radio Symphony Orchestra
第1楽章: 16'31"
第2楽章: 20'20"
第3楽章: 12'05"
第4楽章: 15'05" 
技術的に安全運転に徹した、堅実な演奏。緩徐楽章はそれなりに雰囲気が出ている。しかしながら、急速な部分が全くダメで、何の高揚感もない退屈な演奏に仕上がっている。
L. Stokowski/Houston Symphony Orchestra
第1楽章: 15'10"
第2楽章: 20'03"
第3楽章: 11'34"
第4楽章: 15'51" 
ストコーフスキイにしては、驚くほど真っ当な演奏。現代作品の紹介に対するストコーフスキイの態度を垣間見ることができる。強烈なロシア色を感じさせず、いわゆる西側風の洗練された響きの中で、交響曲としてのこの曲の真価を丁寧に表出している。録音も当時としては素晴らしく、むしろダイナミックレンジが過剰に広くないので聴きやすい。
L. Stokowski/Moscow Radio Symphony Orchestra
第1楽章: 14'57"
第2&3楽章: 29'15"
第4楽章: 13'35" 
早目のテンポでグイグイと押していく、ライヴならではの演奏。オーケストラがモスクワ放送響ということで、強烈なロシア色にも事欠かない。スマートな指揮とローカル色漂うオーケストラとのコンビネーションが、立派な効果を生み出している。ただし、録音が非常に貧弱なのが残念。
E. Tabakov/Bulgarian National Radio Symphony Orchestra
第1楽章: 14'58"
第2楽章: 18'00"
第3楽章: 12'33"
第4楽章: 14'14" 
タバコフらしい前時代的な野性味を残した武骨さが全て長所に転化した秀演である。プロット自体は単純な作品だけに、素直に単純明快な物語として一気呵成に弾き切ったこの演奏は、作品の真正な姿を描出していて好ましい。
M. Wigglesworth/Netherlands Radio Philharmonic Orchestra
第1楽章: 16'23"
第2楽章: 19'51"
第3楽章: 12'17"
第4楽章: 14'38" 
ウィグルスワースらしい清澄で穏やかな佇まいが魅力的ではあるものの、本質的に外連味を有するこの作品の演奏としては、綺麗だが淡白に過ぎるように思われる。逆に、この手の解釈を好む向きには、完成度の高い秀演として薦められる。

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Last Modified 2024.01.06

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