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ピアノ・ソナタ第2番 ロ短調 作品61

現在私が所有している録音の一覧です。ステレオまたはディジタルのスタジオ録音のCDをデフォルトとして表記し、それ以外の物については“備考”欄に記します。独奏者の名前をクリックすると、その録音についてのコメントを見ることができます。なお、印による評価は演奏と録音の両方を考慮しており、5点満点です。また、ディスク番号をクリックするとジャケット画像が別ウィンドウに表示されます。

ピアノ録音年レーベル番号備考評価
ASHKENAZY, Vladimir2003DeccaUCCD-1105
BABINSKY, Margarete2005Capriccio71 087/88
BERMAN, Boris1986OttavoOTR C38616
BRAGINSKY, Alexander1990sound star-tonSST 31109
CHEN, Melvin2006Bridge9238
CHERSHINTSEVA, Maria2007NCA60190
CHUKOVSKAYA, Irina2016MelodiyaMEL CD 10 02455
D'ARCO, Annie1969Musical Heritage SocietyMHS 1151LP
DONOHOE, Peter2015SignumSIGCD493
EGOROV, Youri1983Canal GrandeCG 9215Live(6 May)
GILELS, Emil1965BMG09026-63587-2
GILELS, Emil1965BMG74321 40120 2Live(13 Mar.)
GUGNIN, Andrey2018HyperionCDA68267
JONES, Martin1988AVMAVMCD 1003
KHUDOLEY, Igor1982MelodiyaC10 18977 007LP
KOROLIOV, Evgeni2005hr-musik.dehrmk 033-06
LAUL, Piotr2005Nothern FlowersNF/PMA 9941
LEONSKAJA, Elisabeth1992Teldec9031-73282-2
LUBIMOV, Alexei1998ECM1679
MAJLINGOVÁ, Lýdia1974Opus9111 0342LP
MANGOVA, Plamena2006Fuga LiberaFUG517 
NIKOLAYEVA, Tatiana1992HyperionCDA66620
NOEV, Bozhidar
BalkantonBKA 1692LP
PETRUSHANSKY, Boris1989Art & ElectronicsAED-68010
PETRUSHANSKY, Boris2006stradivariusSTR 33748
PLAGGE, Wolfgang1987SimaxPSC 1036
POSTNIKOVA, Victoria1982MelodiyaC10 17985 004LP
PRESSLER, Menahem1954MGME3079LP
RUTSTEIN, Sedmara Zakarian
OrionORS 82429LP
SCHERBAKOV, Konstantin2005Naxos8.570092
SCHMIDT, Johan1998CypresCYP2622
STONE, Colin1995OlympiaOCD 574Brilliant-7535, Brilliant-8128
STOUPEL, Vladimir1989RodolpheRPC32600
STOUPEL, Vladimir2014Avi-music8553481
VARVAROVA, Elena1989Le Chant du MondeLDC 278 1012
VEDERNIKOV, Anatoly1971DenonCOCO-78872
VIARDO, Vladimir1989Elektra Nonesuch79234-2
VOSKRESENSKY, Mikhail2000TritonDICC-26059
WEICHERT, Caroline1988Accord200252
WIKSTRÖM, Inger1973RCAGL 25003LP
YUDINA, Mariya1960ArlecchinoARL13Triton-MECC-26027, MK D-07063-4(LP)

V. Ashkenazy
第1楽章: 7'30"
第2楽章: 6'35"
第3楽章: 13'22" 
少々もたつく感じも否めないが、よく整理された演奏。緩徐楽章の情感は、何か思い入れのようなものすら感じさせる。
M. Babinsky
第1楽章: 7'58"
第2楽章: 7'30"
第3楽章: 14'08" 
19世紀末から20世紀前半にかけてのロシア・ピアニズムの延長上でこの作品を捉えた演奏。ロマンティックでありながらも神秘的な、ピアノでしか表出し得ない響きが見事に再現されている。印象的な鐘の響きの中で、客観的でありながらも旋律や和声の一つ一つに品の良い感情移入がなされているのが素晴らしい。
B. Berman
第1楽章: 7'05"
第2楽章: 6'47"
第3楽章: 14'43" 
格調の高い、立派な演奏。ソナタとしての構成感を大事にし、非常に理知的に曲を組み立てている。結果として、曲の内容も明晰に捉えることができる。派手にアピールする点はないが、曲の魅力を適切に引き出しているのが素晴らしい。
A. Braginsky
第1楽章: 7'32"
第2楽章: 6'44"
第3楽章: 13'08" 
それなりに雰囲気は出ているが、力任せな印象は拭いきれない。思わせぶりな弱奏部も、説得力に乏しい。テンポ設定等は妥当なものなので、楽譜を見ながら曲を知るには十分だろう。
M. Chen
第1楽章: 7'40"
第2楽章: 6'39"
第3楽章: 13'55" 
いささか堅苦しさを感じるほどの生真面目さと作品との相性が抜群で、雰囲気豊かな名演に仕上がっている。
M. Chershintseva
第1楽章: 9'01"
第2楽章: 7'25"
第3楽章: 17'45" 
静的でありながらも滲み出る情感が秀逸。ただ、乾いた質感を持つこの作品では、真面目さばかりが前面に出て少し退屈するのが残念。
I. Chukovskaya
第1楽章: 7'22"
第2楽章: 7'25"
第3楽章: 13'12" 
ロシアの伝統を感じさせるタッチの質と確かな技巧に加え、理性的に構築された節度ある上品な音楽が素晴らしい。仄暗く歪んだ情緒も見事に描き出されている。
A. d'Arco
Total Time: 23'55" 
落ち着いた、安定感のある演奏。地味ではあるが、まろやかな美感を保っているのが好ましい。ただ、これといって惹き付けられるような特質は、別に感じられない。
P. Donohoe
第1楽章: 7'27"
第2楽章: 6'42"
第3楽章: 12'33" 
よく整えられた模範的な演奏。ただ、取り立てて印象に残るほどのものではない。
Y. Egorov
第1楽章: 7'52"
第2楽章: 7'23"
第3楽章: 13'44" 
ライヴ録音のせいか、全体に肌理の細かさに欠ける。推進力だけで押しきるのが難しい曲だけに、これといった美しさを感じることはできない。淡々と演奏されている感じだが、独特の雰囲気を醸し出している訳でもなく、今一つ中途半端な印象。
E. Gilels
第1楽章: 6'59"
第2楽章: 7'58"
第3楽章: 13'15" 
いかにもギレリスらしい、重厚で力強く、冷徹なまでに透明な音色が、この曲にふさわしい。どこか捉えどころのない不思議な雰囲気を持つこの作品を、極めて古典的な造形をもって仕上げているところに演奏者の非凡な才能が認められる。あまりに生真面目な演奏に堅苦しさを感じるほどだが、素晴らしい演奏であるには違いない。ただし、録音の鮮度はそれほど高くないのが残念。
E. Gilels
第1楽章: 6'47"
第2楽章: 6'24"
第3楽章: 12'12" 
暴力的なまでの冷徹なタッチが、何とこの曲を魅力的にしていることか!かなり早目のテンポの中で、曲に内包されている捉えどころのない感情を全て表出しきっているのにはただただ驚嘆するばかり。ライヴゆえの瑕はあるが、そんなことが全く問題にならないほどの完成度を持った音楽である。
A. Gugnin
第1楽章: 7'12"
第2楽章: 7'30"
第3楽章: 13'43" 
疾走感はあるものの、やや淡々とした印象だが、小手先の表情付けをしていないのはむしろ潔い。
M. Jones
時間不詳 
勢いで一気に聴かせる演奏だが、作品の雰囲気を十分に表現しているとまでは言い難い。決して雑な演奏ではないので、鑑賞には十分に耐え得る。
I. Khudoley
第1楽章: 7'17"
第2楽章: 6'28"
第3楽章: 13'49" 
過度の感情移入や飾り気といったものが排された、淡々とした音楽の運びながらも透明で澄んだ響きの多彩さをじっくりと聴かせる、優れた仕上がりの演奏である。
E. Koroliov
第1楽章: 7'09"
第2楽章: 7'28"
第3楽章: 13'46" 
素晴らしい演奏。一気呵成の表現力と精緻な技巧、そして多彩な音色に感心する。響きのせいか、明るい音楽に仕上がっているところで好き嫌いは分かれるだろうが、単に聴きやすいという次元を超えた充実した演奏に仕上がっている。
P. Laul
第1楽章: 7'15"
第2楽章: 6'52"
第3楽章: 13'45" 
硬質なタッチで勢いを感じさせる楽しい演奏である。過度に深刻ぶらず、また情緒に溺れ過ぎないバランス感覚が好ましい。音楽的にも技術的にも満足な内容である。
E. Leonskaja
第1楽章: 7'11"
第2楽章: 8'06"
第3楽章: 12'55" 
レオンスカヤの音楽性とこの曲の特質とが非常に良い相性を見せている。落ち着いていながら、決してなよなよとしない骨太の演奏は、元々地味なこの曲を徒にショーアップすることなく聴かせる。テンポの扱いなどにも楽譜をよく読んだ跡が見られ、大変素晴らしい演奏に仕上がっている。
A. Lubimov
第1楽章: 7'23"
第2楽章: 6'06"
第3楽章: 12'28" 
L. Majlingová
時間不詳 
乾いた静謐感のある響きが和声の妙などをさりげなく伝えてくれるが、音楽の運びがいささか淡々とし過ぎていて、全体には単調な印象を免れ得ないのが残念。
P. Mangova
第1楽章: 7'58"
第2楽章: 7'59"
第3楽章: 13'30" 
安定した技術と模範的な解釈は、演奏家の豊かな才能の片鱗を感じさせる。いたずらに飾り立てることなく素直に淡々と音を連ねることで作品の雰囲気を自然に表出した、聴き応えのある充実した演奏である。
T. Nikolayeva
第1楽章: 8'39"
第2楽章: 7'11"
第3楽章: 15'15" 
非常に遅いテンポによる、重厚な演奏。曲の瞑想的な雰囲気をよく表出している。安定した技巧に基づいた、美しい音色も十分に楽しめる。ただ、あまりに深く沈み込むような表現が時として単調さを感じさせたり、曲の造形を曖昧にしてしまうようにも聴こえる。音楽は決して弛緩していないのだが、どこか物足りなさも感じる。もっとも、こういうタイプの演奏を好む聴き手も少なくはないだろうが。
B. Noev
時間不詳 
やや重心の低い地味な音色ではあるものの、ショスタコーヴィチらしい硬質なタッチにも不足せず、ごく妥当なテンポも相俟って、確かな実力を感じさせるお手本のような演奏である。
B. Petrushansky
第1楽章: 8'12"
第2楽章: 8'47"
第3楽章: 15'15" 
美しく端正な仕上がり。いささか単調に音楽が流れていくのは否めないものの、和声の動きが素直に表出されているところに好感が持てる。
B. Petrushansky
第1楽章: 8'19"
第2楽章: 8'03"
第3楽章: 14'54" 
重量感のある落ち着いた響きの美しさと、衒いのない端正な音楽作りがとても好ましい、地味ながらも魅力的な演奏である。
W. Plagge
第1楽章: 6'41"
第2楽章: 6'51"
第3楽章: 12'48" 
透明で美しい音色が魅力的。淡々とした早目のテンポも好ましいが、全体的に単調な仕上がり。曲のポイントを掴みきれていない感じで、ソナタとしての造形力に乏しいのが惜しい。
V. Postnikova
第1楽章: 8'40"
第2楽章: 8'16"
第3楽章: 14'57" 
深く瞑想に耽るような雰囲気が前面に出た演奏。強靭なタッチの美しい音は魅力的だが、あまりに深みへはまり込むような地味な音楽はやや取っつきが悪いかもしれない。安定した内容の深さは一級品。
M. Pressler
時間不詳 
端正な技術と譜読みが立派な佳演。素朴な音楽作りを通して自然に作品の雰囲気が醸し出されている。模範的な演奏と言うことができるだろう。
S. Z. Rutstein
第1楽章: 7'35"
第2楽章: 4'55"
第3楽章: 12'56" 
派手さはないが、穏やかながらも芯のしっかりとした音楽が奏でられており、その優しい肌触りには惹かれるものがある。随分とロマンティックな解釈で、とりわけ第2楽章などはスクリャービン晩年のソナタのようにも聴こえるほどだが、これはこれで、ロシア・ピアニズムの系譜を意識させるようで面白い。ショスタコーヴィチらしさは希薄だが。
K. Scherbakov
第1楽章: 6'54"
第2楽章: 6'01"
第3楽章: 11'12" 
颯爽とした推進力を持った、良い意味で聴きやすい音楽に仕上がっている。一方で様式的には端正に作られているので、作品の魅力を幅広い聴き手に伝え得る演奏と言えるだろう。
J. Schmidt
第1楽章: 6'46"
第2楽章: 7'11"
第3楽章: 12'30" 
早目のテンポで、端正かつ淡々と音を積み上げた演奏。全体の構成がはっきりしていて、聴き通しやすい。ただ、この曲も持つ捉えどころのない雰囲気が十分に表出されているとは言い難い。
C. Stone
第1楽章: 7'31"
第2楽章: 7'22"
第3楽章: 11'55" 
非常に安定した、模範的な演奏。ともすれば散漫になってしまいがちなこの曲を、手堅くまとめている。表情の振幅も大きく、単に無難なだけの演奏に終っていないところに好感が持てる。
V. Stoupel
時間不詳 
淡々と弾いているだけで何もしていないのだが、結果としてそれが良い方向に作用している。この曲本来の姿を素直に提示した演奏ということができるだろう。しかし、曲をよく知っている人ならともなく、あまり馴染みのない人に対して魅力を感じさせるような部分はない。
V. Stoupel
第1楽章: 7'05"
第2楽章: 9'37"
第3楽章: 17'37" 
特に第2楽章以降において際立って遅いテンポが採用されているが、その結果として個々の音に付与された意味深さは作曲家自身が想定した以上とすら思えるほどであり、瞑想の果てに辿り着いた深淵を提示しているかのよう。この作品がここまで深い内容を有していたことを知らしめてくれる、傑出した名演。
E. Varvarova
第1楽章: 7'47"
第2楽章: 6'47"
第3楽章: 15'08" 
色々と工夫を凝らしてはいるが、どれも不発に終っている。時折見られる思いきった表情付けは、曲を把握しきれない不安感すら窺わせている。技術的にはとりたてて問題がないだけに、惜しい。
A. Vedernikov
第1楽章: 6'51"
第2楽章: 8'30"
第3楽章: 13'25" 
完璧な名演。ただの一音もないがしろにすることなく全ての音に充実した意味を持たせた読譜力と、それを完全に音にする卓越した技術の、いずれも傑出している。ギレリスのライヴ盤の有無を言わさぬ昂奮とは対極にある、かといって単に冷徹というのではない、まさにこの曲の真価を見直させる凄い演奏。
V. Viardo
第1楽章: 7'28"
第2楽章: 7'10"
第3楽章: 11'21" 
安定感のある演奏だが、作為的な表情付けが気になる。曲の内容を掴みきれていない、もどかしさも感じられるのが惜しい。
M. Voskresensky
第1楽章: 7'06"
第2楽章: 6'09"
第3楽章: 12'33" 
剛毅な男臭さに満ちた名演。繊細な部分においてもスケール大きな表現力と力強さが際立ち、決してとっつき安いとは言えないこの作品を一気に聴かせてしまう。武骨な肌触りが魅力的だが、勢いに任せることなく多彩な表現が繰り広げられる、まさに完成された演奏である。
C. Weichert
第1楽章: 7'25"
第2楽章: 8'23"
第3楽章: 13'42" 
曲の内容をしっかりと捉えた、共感にあふれる好演。表現のスケールが大きく、地味になってしまいがちなこの曲を実に魅力的に演奏している。テンポの運びも好ましく、大きな造形もしっかりとしている。
I. Wikström
第1楽章: 7'35"
第2楽章: 5'35"
第3楽章: 11'45" 
過剰な思い入れを排した即物的なスタイルだが、決して冷徹というわけではなく、むしろ自然な高揚感を持っているのが大変好ましい。硬質で洗練された響きも、作品の雰囲気によく合致している。
M. Yudina
第1楽章: 7'08"
第2楽章: 6'17"
第3楽章: 11'49" 
『証言』の中で酷評されている演奏。しかし、素晴らしい演奏である。普通の演奏者が描ききれない幻想的かつ瞑想的な静寂を、これほど深い味わいを持って描出した演奏は他にない。テンポの揺らし方や声部の強調の仕方などに、確かにユージナの“勝手気ままな”性格の一端がうかがえるものの、これはこれで一つの芸術世界を立派に形成している。

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Last Modified 2024.04.19

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